愛する人への寄る辺

・作

妻の実家へと年末年始に帰省した二階堂武夫(にかいどう たけお)。そこには妻の姉夫婦も同じように帰省していた。人妻である義姉・京香(きょうか)と武夫の年に数回の密会は、アブノーマルな淫熱に浮かされる激しいものだった。

 盆は夫の実家、年末年始は妻の実家という具合に二階堂(にかいどう)家では振り分けていた。
 年末年始ぐらいは妻をゆっくりさせてやりたい、というのが夫である武夫(たけお)の言い分だ。
 妻の方も異論はないらしく、結婚して以来ずっとこの慣習は続いている。

 都内から高速を使って数時間。
 妻の実家に辿り着いた時には、途中で渋滞に捕まったこともあり、冬枯れの山並みの奥へと日は沈もうとしていた。

「ただいまぁー」
 妻が先に車を降り、玄関を開けて中へと声をかける。その後を武夫が荷物を持ってえっちらおっちらとついてく格好だ。もちろん、妻もそれを見ているだけでなく、先に玄関の扉を開けて、中から受け取ってくれる。

 そんなことをしていると、家の奥から義父母と義姉夫婦が現れて出迎えてくれた。
 年末の挨拶を口々に交わし、武夫と妻は宛がわれた客室へと荷物を運びこみ、すぐさま居間へと向かう。 

 居間には妻の肉親と義理の兄がおり、炬燵を囲んでいた。
 炬燵の上には蜜柑の入った籐籠や酒やつまみが広げられており、年末年始の非日常感がすでに漂っている。居間の一角を占めるテレビにも年末の特番が映っていて、一年が終わるのだと嫌が応にも武夫は思い知らされた。

 妻の両親と姉夫婦と過ごし、賑やかながら穏やかな時間が過ぎていく。
 尽きることもなく喋り続ける女達を尻目に、武夫と義父、義兄はちびちびと酒を飲みながら近況を報告し合う。
 
 仕事や景気の話に混じって女達の明るい笑い声が居間に満ち満ちている。
 そうこうする内に日付が変わり、新年のあいさつをにこやかに交わして、三組の夫婦は寝室へと引き上げた。

 翌朝。

 妻より先に寝床を抜け出した武夫は、歯ブラシなど洗面道具を持って洗面所へ向かう。
 営業職として地方へも度々出張をしており、彼にとって宿泊先ではまず身だしなみを整えることが習慣となっていた。

 歯を磨き、顔を洗い、髭を剃る。
 ルーティンをこなし、剃り残しがないか鏡でチェックしていると、義姉である京香(きょうか)が現れた。

 寝起きらしくノーメイクの彼女は武夫の姿を見とめて笑う。
「おはよう」
「おはようございます」
 義姉に対し、敬語で返した武夫に京香が苦笑する。
「もっと楽にしてくれていいのに」
「一応は」

 歯ブラシや髭剃りを妻から貰ったポーチに収め、武夫は京香に洗面台を譲る。

 鏡の前に立った彼女はぬるま湯で顔を洗い始めた。丁寧に洗顔をしている京香は前屈みになり、尻を武夫に向かって突き出している。薄いパジャマの生地の向こうにうっすらと下着が透けていた。

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