義父と私の罪

・作

岡本司郎は、息子の妻である聡子と2人で暮らしている。5年前に息子の隆司が不慮の事故で他界してから2人暮らしだった。1年ほど前から肉体関係を持つようになった2人だったが、罪の意識と快楽に溺れる不安から司郎は聡子に再婚を勧めてしまう。義父との罪を背負っていく覚悟を決めている聡子は、司郎の入浴中に裸で浴室に入っていき…

「お義父さん」

「さ、さとこさん…?」

岡本司郎の入浴中に突然裸で入ってきた息子の妻の聡子は、目に涙を溜めていた。

「どうして」

息子の隆司が不慮の事故で他界して聡子と2人暮らしになって5年、彼女と肉体関係を持つようになって1年、溺れるような快楽に恐ろしくなって、少しずつ避けるようになって2カ月ほどが経つ。

「どうして?お義父さんがあんな意地悪なこと仰るからでしょう」

「いや、意地悪って…」

すっかり身体を洗い終わって、司郎はお湯に浸かっているところだった。
湯気が舞っているとはいえこんなに明るい浴室内で見ると、聡子の裸体は異様に艶を持っていて、司郎からすると光ってさえ見えた。

「私再婚する気ないって、何度も言ってますよね?」

聡子の声は、怒りを含んでいるようにも、悲しみを含んでいるようにも聞こえる。
聡子はおろおろする司郎を横目に、シャワーを出して身体を洗い始めた。

「…私に気を遣ってるなら」

「いたいからです」

「え?」

シャワーの音にかき消されそうな、小さな声だった。
しかし聞き返すと、聡子は顔を上げて司郎の顔をはっきり見て言った。

「私がお義父さんと一緒にいたいから、だから再婚はしないんです」

泡が聡子の身体を伝って流れ落ち、消えた。
35になる聡子だが、司郎からしてみれば若くハリのある肌だ。
大きな乳房から腰のくびれ、少しだけ柔らかく緩んだ下腹部、どこに目をやっても司郎の欲望を刺激する。

罪深いことだとわかっていた。
死んだ隆司に、顔向けできない。
わかっていて、欲望に勝てなかったのはお互いだったのだと思う。

「お願いだから、私を手放さないでください」

聡子はざぶんと浴槽に入って来た。
司郎が建てたこの家の浴室をリフォームして浴槽を大きくしたのは、いずれ介護をしやすいようにとの隆司の提案だった。
そんなことを思い出して聡子はやはり胸が痛んだ。
しかしこんな罪悪感を飲み込むほどの欲望が、聡子の喪失感を薄れさせている。
だからどうしても、やめられないのだった。

「私にはもうお義父さんしかいないんです、お義父さんにも私だけだって…言ってほしいです」

切羽詰まった声が浴室内に響く。
広げたはずの浴槽も、大人が2人向き合って入れば窮屈で、身体は自ずと密着する。

「こんなことは…間違っている」

ならば頑として突っぱねるべきだった、最初から。
なんのかのともっともらしい言葉を吐いても司郎が欲望に勝てないことは、既に熱くいきり立っているペニスが物語っていた。

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