花をまとう女

・作

石戸貴文は花屋の店員の百合に一目惚れして、毎日店に通っていた。そんなある日、百合から華道を習い始めたから一緒にいかないかと誘われる。行ってみると、そこは立派な日本家屋で、部屋には複数の男がいた。山城という男によって百合は花器に見立てられ、裸に縄で縛られて花を生けられていく。妖しげな世界に貴文は驚くが、次第にのめり込んでいく。

 会社からの帰り道、花屋に寄って花を1輪買う。
 それが石戸貴文のここ最近の日課だった。
 理由は単純で、花屋の店員である花房百合に一目惚れしたからだった。

 髪をサイドでひとつにまとめ、細身ながらエプロンを押し上げる豊満な胸に明るい笑顔。貴文と同じ、20代半ばくらい。

 毎日通ううちに顔なじみになり、他の客がいない時は雑談して下の名前で呼び合うような仲になった頃には、百合の過去も分かってきた。

 若いながら未亡人で、夫が残した借金を返しているが、厳しい状況であること。
 それが分かっても、貴文の百合への気持ちは変わらなかった。

 そんなある日、百合が言いにくそうにしながら聞いてきた。
「あの、急ですけど明日の土曜日って空いてますか?」
 向こうから誘いが来たと、貴文は内心飛び上がりながら答えた。
「はい、空いてます。すごく暇です!」
「実は私、華道を習い始めたんです。それで、貴文さんも一緒にどうかと思いまして」
「はあ、華道ですか……」
 毎日通っているうちに花にも興味が出てきていた。それに百合と出かけられるということで、貴文は一緒に行くことにした。

「すごいお屋敷ですね……」
 まるで老舗旅館のような日本家屋に貴文は感嘆してつぶやいた。
「山城先生は、その道では有名な方なんですよ。今日、出席される他の方も財界の有名人だったりする方もいるんです」
「そんな所に俺みたいな平凡なサラリーマンが行って大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。貴文さんには素質がありそうですから」
「そうですか? 生け花なんてやったことないですけど、頑張ります」
 単純に喜んだ貴文は、意味ありげな百合の笑みに気づかなかった。

 見事な日本庭園を横に見ながら長い廊下を進む。
 通されたのは20畳はある広い部屋だった。
 先にいた5人の男に一斉に見つめられ、貴文は足を止めた。自分より年上で高級なスーツを身にまとっている男たちに、場違いだったと後悔する。

「私は準備があるので、貴文さんはここで待っていて下さい」
「えっ。あ、はい」
 百合が去り、貴文はいたたまれない思いで端に座った。少しして、和服姿の男が入ってきた。
 山城は50代くらいの筋肉質の男だった。

 華道っぽくないなと貴文が思っていると、その後ろについて百合が入ってきた。
 真っ赤な襦袢を着ている。
 この格好で花を生けるのかと不思議に思っていると、百合は帯を解いて襦袢を脱ぎ捨てた。

「えっ……」
 思わず、声が出た。

 百合は襦袢の下に何も身につけていなかった。
 たっぷりとした見事なお椀形の乳房に、細くくびれた腰。安産形の柔らかそうなお尻にすらりと伸びた足。そして、あそこは無毛だった。割れ目がはっきり見える。

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