5日目の夜

・作

鈴木勇樹と妻の葉月は、ポリネシアンセックスに挑戦していた。2人の普段のセックスはあっさりしたもので、それを2人とも不満に思っているわけではなかったが、相性がいいからこそ試したいという葉月の言葉に押されて勇気も決断した。5日間かけて行われるポリネシアンセックスの5日目、いよいよ挿入する夜になると…

「30分?」

寝室の照明を少し落としながら、鈴木勇樹が妻に問いかけた。

「そう、30分。できそう?」

キャミソールとショーツだけの姿で、ベッドの上から葉月は夫に答えた。

「意外といけるかも、なんかいま不思議と落ち着いてるんだよね」

「え、勇樹も?私も今日落ち着いてる。昨日が一番ヤバかった」

「本当それ。昨日はヤバかったよね!あれ乗り越えたからこんな落ち着いてるのかな」

確かに、2人とも不思議と今夜は落ち着いていた。
今夜2人がしようとしているポリネシアンセックスは、1度のセックスに5日間という時間をかけるもので、今夜はその5日目なのである。
ポリネシアンセックスを行う5日間のうち、ペニスを膣に挿入するのは最終日の5日目だけで、それまでの4日間は互いの身体をゆっくり愛撫するのみというルールがある。
夫婦はこの前4日間のプログラムをクリアしており、つまり互いの身体を愛撫しながら絶頂しないという状態を4日間続けている。

始める前は夫の勇樹など、正直5日目まで我慢ができないだろうと思っていた。
現に4日目の昨夜はもう限界だと思うほど欲望が滾っていた。
触れ合った部分が次々と熱を持って、絶頂したくてたまらなくなったが、それをぐっと堪えてギリギリで絶頂と挿入を避けた。

昨夜はその後眠るのが苦しいほどだったが、今2人は少し落ち着いている。
身体の絶頂を求める極限の興奮が落ち着いている代わりに、互いを愛しく思う気持ちが大きく膨れ上がっている。
ポリネシアンセックスにはそういった側面もあると聞いてはいたが、菜月も勇樹も自分の心と身体の変化を不思議に思うのだった。

*****

結婚してから2年、葉月と夫との関係はセックスも含めて良好だ。
今回、5日間をかけて行うポリネシアンセックスを試してみないかと提案したのは葉月の方だが、勇樹とのセックスに不満があるからとかマンネリを感じていたからという理由ではない。
昔からの女友達から最近聞いた経験談にすごく興味をそそられたからで、その友人によると「とにかくすごかった」ということらしい。

最初に葉月からポリネシアンセックスをやってみないかと誘われた時、勇樹はそれほど乗り気ではなかった。
ポリネシアンセックスがどういうものか、ぼんやりと聞いたことがあったが、基本がせっかちな勇樹は「自分には向かないだろう」と思っていた。

妻の葉月とのセックスは普段、前戯から数えても45分~1時間程度しか時間をかけていない。
夫婦は共働きで、セックスのペースは週に2回。平日のどこかで1回、週末に1回というのが2人の標準だった。

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