突入!いきなりラブホ飲み会 / 古着屋・久志の「出会い系」冒険⑤ (Page 4)
久志は最近の出会い系の特徴として「メッセージの数は変わらずだけど、セックスまでの到達度は低下している」と見ていた。それはそうだろう。コロナウイルスの件がある限り、以前のような“ワンナイトで、スポーツ感覚で”とか“欲望のままに”とかいう感覚はなくて当然である。
それでも、出会い系が賑わっているという事は「ナニかに期待している」のも確かだと、久志は思っているのだ。
そんなわけで、一日おきに久志は先のようなメッセージを同じ時刻に入れていた。それを1週間繰り返していくと、ポツポツとメールが届くようになったのである。
「旦那の帰りが早いから、ばれないで遊ぶには10時から3時までなんだけど。子供は夕方前には帰ってぅるし」(33歳・専業主婦)
「昼間に会うのもイイかも。いつもは、夜だから(笑)」(37歳・独身OL)
昼間部は、こうした類いの内容のメールが多かった。やはり、昼間に時間がある主婦・人妻がメインというのは「相も変わらず」といった感じだった。そこに、自宅待機やリモート勤務のOLが少数加わるという趣だ。比率でいうと8:2といったところである。
これらの中から脈がありそうなメール主と、サイト内やり取りを続けていってタイミングが合えば「アポ」を、と目論んでいた久志だった。
一方、夜間部では例え平日でも翌日が休みなるOLが、深夜帯に多く現れているとの情報も得ていたのである。
という経緯で、久志の個人ボックスに「夜間部」から入ってきたメールは15通あまり。冷やかしや「援」「割り」目的を除けば、順当な線だと思われた。
その中で久志は、
「営業部にいるんですけど、接待はないしゴルフは極端に下手だから呼ばれません(涙)。そんなわけで、夜間はヒマしてるのでメールから“飲み”に繋がるような男性を探してました。アラサー過ぎですが、それでも良ければ(笑)」
というメッセージに、重点的にメール攻勢をしてみたのである。
送ってきたのは、カスミさん(34歳・独身OL/彼氏ナシ)で、リモートは社内打ち合せ時のみで、出勤は週に半分の営業職だった。
「攻勢する」とは言っても、闇雲に送信ばかりしていては「出会い系ストーカー」(←会ってもいない、妄想だけバージョンの香具師。だから、たちが悪い)に間違われて運営に通報されかねない。なので、届いたメールに素早く返信する程度にとどめてはおいたのだ。
「及川さん(今回の偽名)は、昼間に時間が空いた時はどうしてるんですか? 私なんか、慣れないから掃除して洗濯して終わる日もあるんですよ」
「それは勿体ないですね。私は映画を観たりミステリを読んだり。でも、映画もいいのが掛かってないし、やる事もないですね。カスミさんは、泳いだりすればいいんじゃないの?」
「プールもたまに行くけど、飽きちゃって(笑)。泳いだあとに『英国調パブでビールを飲んで早寝して終わり』っていう日もありますよ。あはは(自虐笑)」
こうして2人は、サイト内でメールをキャッチボールさせながら親密度を増していった。客観的に見ると、何ら普通の進行と変わりがないように見えるが、久志にとっては珍しい事だったのである。普段は、昼間の主婦層が多かったからだ。
確かに、以前にも深夜アポや“夜の即アポ”での即セックスもなかったわけではない。ただ、こうして普通にOLとやり取りを進めていくのが新鮮だったのである。
それに、日中と夜間の差があるにしても当初の狙い通りに「変則勤務で持て余したOL」
と繋がったのが「出会い系マニア」を自認する久志にとっては誇らしくもあったのだ。
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