突入!いきなりラブホ飲み会 / 古着屋・久志の「出会い系」冒険⑤
きょうも出会い系にログイン、サイト内を彷徨う男・古着ネット通販屋の甲斐久志(48歳・バツイチ・独身)。自営業者の特権として昼間の情事を楽しんでいるのだが、今回は嬉しい誤算が久志の身に降りかかる!モテるのはずもない久志が、アポったオンナから“泊り”をせがまれて…。自称・オジサンマニアのOLとの、嬉しいエピソードをここに懐述!
社長の苦悩
久志は午前便の入出荷の仕事を終えて「やれやれ」と、独り言を声に出して呟くと事務所に入ってデスクの前に腰を降ろした。昼休みが近いので、趣味の「出会い系」をやろうとしていたのだ。
出会い系にうつつを抜かしているようだが、商売の不安ももちろんあるには有る。
出荷分は国産品でまかなっているおかげで、なんとか最低限の数字をキープしているが入荷がとにかく少ないのだった。その影響が出荷にも表れて、それが売り上げの数字となるのだから、久志のような個人営業に毛の生えたような店には大きいのである。
だが、この不況に対して久志のような小舟の船頭では、どうにもならない事もあるのである。コロナ禍が、久志の会社にも押し寄せているのだ。
会社概要は、カジュアル衣料の古着・新古品のネット通販業だ。国内の倒産品やバッタ品、閉店する問屋や同業者から安く仕入れては、ソコソコの金額を乗せては売り捌いて生計を立てていた。
全国から仕入れた(買い叩いた)古着や新古品を都内近郊の工業団地内の古くて小さな倉庫を借りて、そこを拠点として発送しているのである。ピッキングと梱包、発送や在庫管理は久志みずからと古参パートの麗子嬢で、こじんまりとやっているのだった。
蛇足だが、その古参パートの麗子嬢は、高校生の娘を持つ人妻だった。たまに娘は、久志の倉庫にバイトに来ている。麗子嬢自身は齢40歳のオンナ盛りである。
久志のショップは開業から多くのアメカジ商品を扱ってきた。それと、少ない数でも米国からの輸入モノも仕入れて「ハク」をつけている。
また、それを目当てにしている固定客もいるのだった。久志は常々、有難いと思っているのは正直な所だ。だから、年に1度は現地へ出張しては、社長みずからが買い付けをしてきた経緯があったのである。
それが、このコロナ禍で状況が一変した。買い付けどころか米国内でのコロナウイルス感染が凄まじく、商品が流通しない。だからといって、久志が現地に飛ぶ事もままならないのであった。
かといって、リーバイスの工場がフィリピンからベトナムへ移転した事から、この両国に“出物”をゲットしに行こうにも、ヴィザは発給されないので無理だ。はっきり言って「コロナが怖い」のも本音でもあったし。
幸いな事に、国内は第3波の感染が増えても“経済優先”の姿勢は政府が換えていないので(注:2020年12月上旬現在)、緊急事態宣言の頃よりは流通が機能してるのが現状。
そんな状態なので、麗子嬢を解雇することはなく「しばらくは週4出勤にしてください」と、素直にお願いして現在をやり過ごそうとしているのである。
それと直輸入品にたいしては、「こっちは、しばらくは我慢だな」と、覚悟を決めてもいたのだ。
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