熱帯暗夜 (Page 8)

 自分の形を教え込み、忘れられないものとするため、伸晃は刻み付けるように屹立した男根を入り口から最奥までじっくりと動かしていた。
 一方で怜子も蕩けるような媚肉の抱擁と忘我の淵へと誘う先端への子宮口接吻で応える。

 ベッドを軋ませ、舌を絡ませ合い、殆ど声もなく、二人は一心にお互いの肉体を貪り合う。

 不意に怜子の全身がぶるぶると震え、背筋が弓なりに反った。優しげだった媚肉の抱擁が強烈な締め付けに変わる。根元から先端まで脈動し、蠢動し、子種の一滴まで逃さず搾り取るための肉の蠢きが射精を強烈に促す。

 ぷっくりと雁首が膨れ、睾丸の底から一滴残らず伸晃は怜子の子宮へと精を放った。
「……っ!」
 声を殺した怜子が伸晃の背中へ手を回して抱き締める。その法悦の抱擁によって、伸晃はさらに吐精した。睾丸が震え、雌を孕ませるという雄の本能に従って、勢いよく伸晃は射精を続ける。

 長々と続いた射精の快感から解放され、伸晃は慎重に腰を引く。硬さを失った男根がベッドの上に落ち、怜子の膣口からは愛液と混ざりあった白濁液がゆっくりと零れ落ちる。

 伸晃は射精後の脱力感に堪えつつ、怜子の上から退く。
 狭苦しいシングルベッドで抱き合ってしばらく横たわっていたが、伸晃はベッドから体を起こした。体の芯に気だるい疲労がこびりついている。

 耳を澄ますまでもなく、窓を叩く雨音は強まりこそすれ弱まる気配は欠片もない。風も凶暴さを隠しもせず甲高く鳴いていた。

 伸晃は一度ベッドから降りると、着ているものを脱ぎ捨てる。
 熟れた女の匂いを香しく発している怜子はベッドから動く気配はない。
 全裸になった伸晃は再び怜子へ覆い被さった。

 この偶然の機会を逃せば、怜子と再び関係を持つことは難しいだろう。
 だからこそ父親の再婚相手との一夜の過ちを、伸晃は今度こそ一生ものの咎にするつもりだった。
 怜子の本心すらまだ伸晃は確かめていない。
 気の迷いだったのか、それとも出会う順番が間違っていただけなのか。

 伸晃はそれを確かめなくてはならない。

 嵐は、まだ去らない。
 夜は、まだ明けない。
 熱は、まだ冷めない。

 朝日が全てを詳らかにしてしまうまで伸晃は暗夜の嵐ように渦巻く感情に任せ、焦がれた女を抱くのだった。

(了)

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