あなたしか映らない (Page 6)
「なんちゃって経営学部っす」
「なんたが、私達お互いのこと、全然知らないね」
「いいんすよ。ネタバレされたもんほど、つまんないんすから」
「いのかなぁ。……まあ、いっかぁ」
「ああ、まあ、なんといいますか。オーナー様」
泰輔は波奈の上から退くと、床の上に正座して真面目な顔になった。
「責任取らせてください」
同じく波奈も正座し、真面目腐って返答する。
「末永くよろしくお願いします」
真面目な顔のままお互いに黙り込む。
カチコチ、と安物の時計が間を埋めるように音を立てて秒針を動かす。
一秒、二秒、……――。
「くふっ」
「あははっ」
堪え切れず、二人の顔が笑顔に変わる。
泰輔が美しいと思った瞳にも、彼自身の瞳にもお互いだけが映っていた。
(了)
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