ファンレターで、セックスアピール? (Page 2)
電車に揺られること十分。そこから乗り換えてもう二十分。
さらに駅からも十分ほど歩いて、ようやく我が家だ。
荷物を全部部屋に置いてふぅ、と一息つく。
どっしりとした重量感から解放されて肩が随分軽くなったように感じる。
さて、何をしようか。
このまま夕食も食べずにベッドに転がって寝てしまおうか、なんて考えるくらいには疲れた。
上着のボタンを外し、脱ぐと同時にその辺りに投げ捨てる。
「ああ、そうだ」
すっかり忘れていた。
鞄の中をがさごそと漁って取り出す。あの女の子から貰ったファンレター。
「どんなこと書いてあるんだろうな」
多めの楽しみと、少し不安。ドキドキしているのが自分でも分かる。
いい歳して子供みたいだな、俺。
早速、封を開けて中身を確認する。思った以上に枚数が多い。
「九城先生へ。
私はシオリって言います。先生の大大、大ファンです……!!
こういうファンレター書くのは初めてなので、変だったらすみません」
ノート1ページ分くらいの便箋に、女性らしい小さめの文字がびっしり埋め尽くされている。
わざわざ俺のために書いてくれたのだと思うと嬉しくて顔がニヤけてしまいそうだった。
黙々と読み進める。
「先生の描くお話が大好きです。
普段は普通の子なのに、愛し合う時はすっごい乱れて……
いっつも読むだけで体温上がっちゃいます」
ストレートに褒められたものの、ちょっと複雑な気分だった。
なにせ書いている相手が女性なものだから、つい想像してしまう。
シオリちゃんは、体温が上がって……どうなるんだ?
俺の本をオカズに……いやむしろ、俺の体温が上がってきた。
「そういえば最近、社会人になってお金に余裕できたりなんかもして
趣味でコスプレ始めてみたんです。
先生に見て欲しくて、写真、いれてみました。
良かったら、ここに感想を――」
確かに手紙の中には滑らかな手触りのものが混じっていた。
大胆にも携帯の電話番号にメールアドレス、有名なコミュニケーションアプリのIDまで書いてある。
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