古本で買った呪術を実際に試してみた
古本屋で妖しげな呪術の本を手に入れた公輝(きみてる)は、動画投稿のネタとして実際にこっそりと試してみることにした。実験の対象は同じサークルに所属している五十鈴(いすず)という女子大生。その結果本物だった呪術の力に公輝の欲望は一気にエスカレートしていき……。
古本屋で変わった本を手に入れた。
『……と、……に関する呪術論考』というタイトルの古本である。
前の持ち主がぞんざいに扱ったらしく、保存状態は悪い。すっかり日に焼けてしまい表紙は退色しているし、中身も所々で印刷が掠れているおかげでタイトルがちゃんと読めないし、落丁まであった。
だが、三百円という格安さと、内容の面白さで公輝(きみてる)は購入を決めたのだった。
中身はどこの地方かは判然としないが、とにかく呪術に関する文化人類学的な論考を記している。ただ、呪術に用いる道具類や薬草などに関してかなり詳細に記してあり、資料的価値は高いかもしれない。
ただ、公輝としてはその内容を実践して、面白おかしい動画でも撮影し、投稿するつもりだ。
動画共有サイトか、SNSのどちらを使うかは決めていないが、とりあえず必要な道具を通販で手に入れた。ネット通販で何でも手に入る時代に生まれたことを感謝するしかない。
手始めに公輝は接触呪術というものを試してみることにした。
人形などを媒介にして、呪術の対象も同じような状態になるというものである。
例えば人形の首を折ると、対象の首も折れてしまうといった具合だが、彼には幸いというべきか殺したいほど憎い相手はいなかった。
「どうしようかな……」
少し考え、彼は同じサークルの仲間で試すことにした。
同じ講義も取っており、接触する機会には事欠かない。
首尾よく必要だった毛髪を手に入れ、公輝は早速実験をしてみることにする。
舞台は講義中の教室。なかなか人気があり、欠席が少ないた席は九割ほど埋まっていた。彼が座っているのは隅の席は教室全体を見渡せる位置にある。
公輝は鞄から布製の人形を取り出し、ノートの上にそっと横たえた。掌から少しはみ出す程度のサイズのその人形は不格好ながら、しっかりと人の形をしている。
目立たないように視線だけを動かし、実験対象を探す。
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