箱詰めの天国 (Page 4)

 女は自らも唇を開き、男の舌先を迎え入れた。湿った暖かい感触を伴った他者の一部を受け入れる。そのことに嫌悪はない。むしろ、もっと欲しくなった。

 お互いの舌先を舐り合い、男と女は我知らず体をさらに密着させている。化繊ごときに相手の体温を阻まれることがもどかしい。

「少し待って」
 女はもどかしさと切ない疼きに堪えきれず男を制止した。

 一旦体を離し、女は身に纏うものを躊躇いなく脱ぎ捨てる。足元に安物の服を捨て去り、男の着ているものをせっかちな手付きで脱がせていく。
「自分で脱げますよ」
「いいの、させて」

 文字通りに一糸纏わぬ姿になった女の肢体は引き締まっており、贅肉がついていない。代わりにしなやかな筋肉がつき、優美なネコ科の動物を想起させる裸体である。

 男の前を開け、肌を露出させた女は再び男の膝へ乗った。先程までと似た姿勢だが、違うことがある。
 それは二人の性器が露わになり、淫熱を宿していることだ。

 挿入はまだしない。だが、女の割れ目に沿って、男の肉棒が添えられている。ゆっくりと腰を前後に女が揺すり始めた。柔らかな陰唇に男根を愛撫され、程なくして男のものは固く反りだした。
「あぁ」
 すると、女の口からは甘い声が自然と溢れる。剛直が淫唇を割り開いて敏感な陰核を、その逞しい肉茎で刺激したからだった。その刺激は外だけでは満足できぬ、と膣口からとろとろと蜜を零す。

 淫らな水音が次第に大きくなり、女の腰も動きを速める。女の肉壺へ怒張を突き立てる男のように腰を振り女は快楽を貪る。男は眉根に皴を寄せ、込み上げてくる射精感に堪えていた。

「ああ、ぁぁ、イク、イっちゃうっ」
 嬌声を上げ、女は全身を強張らせる。体がぶるぶると震え、粘度の高い愛液が膣口から溢れ出して、男の男根を白く化粧した。

「ぐっ」
 同時に男も限界を迎え、射精する。女の股座へ射精された精液を汚した。

 一応の絶頂。
 だが、物足りない。

 女は下腹に空隙を抱えたままだ。
 男は腕の中に空白を湛えたままだ。

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