今は獣のままで (Page 2)
「こんばんは」
女性に声をかけ、段田は身振りで隣に座るように促す。促されるまま、女性は彼の隣に腰を下ろした。すると一人で段田一人では少々大きかったアウトドアチェアのスペースがちょうどよく埋まる。
間近に人の体温があると、焚き火よりもずっと暖かく感じた。しばし、二人は無言で揺らめく火を見つめる。
「今夜も冷えるようですよ」
段田の声を聞いて、女性は膝の上で両手を重ねた。隠すように重ねられた彼女の左手の薬指に指輪がはまっていることを段田は知っている。
「あっ」
隠された左手を暴くように段田は女性の手を引っ張った。引かれるがまま、女性は段田にしな垂れかかる。
(顔は地味なくせに、相変わらずいい体だ)
段田は暑い防寒着越しにも分る女性の肉感的な体に胸の内で思わず独り言ちる。
「んむっ」
さらに強引に女性の唇を奪い、段田は舌を絡めた。
目を閉じ、歯列、歯茎を舐り、口腔を舌先で犯す。
そうしていると、女性と出会った時のことが段田の脳裏に浮かび上がってくる。
きっかけは緊急避難的な行為だった。
キヤンプ初心者だった段田と女性は管理人がいなくなった真冬のキャンプ場で、暖を取るために同じテントに入った。寝袋の適切な使用温度を大きく下回り、薪を使い切った二人は古典的な方法で、その難局を乗り越える。
肌と肌で温め合ったのだ。
安物の寝袋は薄かったので強引に二人で入ると簡単に生地が伸びてしまう。無理矢理二人で寝袋に入り込み、ぴったりと身を寄せ合って一晩を過ごしたのである。
今となってみれば車に戻るなど、色々と方策とあったはずなのに、二人して薄っぺらなテントの中で肌を合わせていた。
難局を乗り切った段田と女性は、それから共犯関係のような奇妙な間柄となった。
それとなくお互いのことを意識し合い、キャンプ場の管理人や他の利用者に気取られないように振舞ったのだ。
「うっ」
段田の追想を断ち切るように女性の手が伸び、男根をズボンの布地越しに刺激する。短く切り揃えられた爪の先で、カリカリと先端を引っ掻くのだ。既に勃起していた段田は思わず呻き、唇を離す。
二人の視線が絡み合う。
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