いつかまた行けたら (Page 2)
「今日はどう致しますか?」
声をかけられ、睡魔から逃れた憲和は決まりきったやり取りを開始する。
「いつも通りに、お任せします」
「かしこまりました」
「お願いします」
そういった憲和の顔へ柔らかなタオルが掛けられた。視界が閉ざされ、全身を揉み解される感触が次第に意識を弛緩させていく。
疲労と緊張で凝り固まっていた体が、繊細な手によって解体されていく感覚。
痛みは僅かたりともない。
解される体に呼応するように意識も次第に明確な繋がりが分断されていく。そして、一つひとつ暗がりへと落下を開始する。その心地良い落下に憲和は抗うこともできず、眠りについてしまった。
「うっ、ぅぅっ」
小さく呻きながら憲和は再び目を開ける。
タオル越しにも照明の眩しさを感じない。体を揉み解す感触もない。
不思議に思い、そっとタオルを捲ってみると室内は照明が絞られた状態だった。上半身を起こすと、室内に誰もいないことが分かる。
不安に駆られ、寝台から降りようとした所で静かに襖が開けられ、マッサージをしてくれていた女性が現れた。それだけでほっとして、憲和は胸を撫で下ろす。
「お目覚めになられましたか」
「すみません」
「いえ、お疲れだったようですから」
微笑みを崩さぬまま、女性が答えて壁際のスイッチを操作する。絞られていた照明が輝きを増し、入室した時と同様の明るさを取り戻す。
「続きを――、っ」
言葉を不意に詰まらせ、女性が視線を一点に注ぐ。
その視線を追った憲和は自分の股間へと辿り着いた。スラックスを押し上げる彼のものは、ぱんぱんになっており、存在を嫌というほどに主張している。
「あ、いや、これは」
仕事で忙しく最近は抜いていなかった。それに疲れている時ほど、どういう訳か強烈に勃起してしまうものである。
「生理現象ですから」
女性は驚きを微笑みで包み、助け舟を出すように言った。
しかし、憲和のものはそんな女性のフォローをものともせず、大きさを保ったままだ。その羞恥に耐えかね、憲和は寝台から立ち上がろうとする。
「まだマッサージは終わっていませんから」
彼の肩をやんわりと押さえ、女性はそう言って憲和を寝台に再び横に乗せた。そして、タオルを再び顔の上へと乗せてしまう。
「……続きをしますね」
タオル越しとはいえ、耳元で囁かれ憲和は思わず快感に震えてしまった。彼女の声は耳朶を愛撫されるような、そんな響きを伴っていたのである。
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