実況彼女
野田和弘の恋人、前田操は内気で恥ずかしがり屋。それなのに仕事でプレゼンすることになって悩んでいた。人前で話す度胸をつけるため、セックスの実況をすることにした和弘と操。操は最初は恥ずかしがっていたけど、だんだん大胆になってきて……。「あんっ、中で、いっぱい……!」気持ち良くて喘ぎ声と実況が止められない!
せっかくのデートなのに、彼女は浮かない顔をしている。
昼下がりのカフェで野田和弘はコーヒーを飲みながら様子をうかがった。
恋人の前田操はチーズケーキをフォークでつつきながら何か考え事をしていた。
和弘と操は同じ会社に勤めている。と言っても部署もフロアも違い、接点はほとんどない。
エレベーターで何度か一緒になるうちに気になり、和弘から告白した。
つき合い始めてから操が2歳年下の24歳であること、小柄なだけじゃなく胸もお尻も小さいことなどが分かった。童顔も相まって高校生くらいに見えることもある。
「なんかあった?」
和弘が訊くと、操は表情をますますくもらせた。
「来週、プレゼンすることになったんです」
「ああ……操は人前で話すの、苦手だもんな」
同じ会社とはいえ、部署が違うと出会えないことも多いし、業務内容も分からない。
操は内気で、つきあい始めて半年たつのに敬語のままだ。セックスの時も恥ずかしがって、あまり声も出さず反応も薄い。それでも最初の頃に比べるとましになっていた。初めての時など、マグロどころか冷凍マグロのようにガチガチに固まっていたのだ。
和弘はそれが不満だったが、性格なので変えるのはなかなか難しかった。
「練習すれば大丈夫だよ。俺もつき合うから」
「お気持ちは嬉しいんですが、私には無理です……」
操はフォークを置いてうつむいてしまった。
「なんかこう、度胸をつけられるような大胆なことができればいいのかもな」
そうしたらセックスも充実するのにと考えた和弘はいいアイデアを思いついた。
和弘と操はラブホテルに入り、ベッドの上で正座して向かい合った。
「これからプレゼンの特訓をする」
和弘が宣言すると、操がきょとんとした。
「ラブホテルで特訓ですか?」
「そうだ。これからセックスをする」
「……はい」
操が赤くなって右下ななめ45度を見た。
「操はセックスの間、実況してほしいんだ」
「実況? ……野球や競馬みたいなのですか?」
「そう。どうされてるか、どう感じてるか、どう気持ちいいか、実況する。これで恥ずかしさを克服するんだ。恥ずかしさを克服すればプレゼンも成功する」
「なるほど……?」
「とにかくやってみよう」
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