見知らぬ自分と妻 (Page 8)

 膣奥を突く角度を浅く深くとナニカは微妙に変えて、腰の律動も強弱をつけて女を責める。快楽の深度の違いのようなものが、眞弓を法悦の忘我から時に帰還させた。しかしながら、それは醒めるといった類のものではなく、ある種の冷静さで眞弓へ肉を打たれる悦びを認識させる。
「ぁっ、ああぁん、う、きもち、いぃ……!」
 声すら出せない快感の渦から浮かび上がり、口から迸る自制できない嬌声が、さらに眞弓の淫熱を煽った。
 そんな彼女の腰を抱えていたナニカは、ゆさゆさと腰を打ち付ける度に揺蕩う乳房へ手をかける。柔肌に指を沈ませ、乳房の重たげなリズミカルな揺れを掌で味わう。春を持つ蕾のように固くなっている乳首を指先で弄べば、眞弓は快感に身をくねらせる。

「ああ、もっと、もっと弄って」
 愛欲に濡れた声で懇願され、下半身は繋がったまま、ナニカは眞弓に覆い被さった。腰の動きは止めず、ナニカは彼女の体内を刺激する。

 眞弓は両手をナニカの背へ回してしがみ付いた。荒々しい呼吸を宙へ放ち、打ち付けられる腰に合わせて自分からより深く快感を貪ろうと下半身を妖しく蠢かせる。
 そんな彼女の首筋へ、ナニカが唇で触れた。
「あんっ」
 眞弓の口から今までになく甘い声が飛び出した。

 首筋への接吻は性感帯から生まれる熱っぽい快感とは異なる快感を生み出したのである。
 熱っぽく、糸を引くような重たげな快感ではなかった。もっと甘く、それでいて軽やかな快感は、意識そのものを抱き締められるように心地良い。

「良晴さん、良晴さん」
 夫の名前を呼び、眞弓はナニカの背中を強く抱く。

 ナニカは相変わらず変わらぬ表情のまま、呼びかけに応えて腰の動きを強める。とんとんと軽く膣の一番奥を叩いていた男根の先端が、どすどすと情け容赦なく破城槌のようにぶつかってきた。

「お、おおっ、ああああぁっ! ひぃぃっ、あああ、イくっ、いくいく、良晴さん、イきますっ」
 膣肉が射精の予感に膨らんでいた先端から根元まで肉棒を絞め上げる。絞め上げつつも眞弓の媚肉は脈動を繰り返し、ざわざわと蠢いてナニカに射精をねだっていた。子宮口も口を開け、愛する夫の射精を待ちわびている。

 だが――、

「ああ……」
 眞弓が残念そうな声を上げ、体を離したナニカを見つめる。

 ナニカは射精寸前の赤黒い男根を膣から引き抜くと、大量の精子を彼女の腹の上へと解き放った。濃く量の多い精子が腹の上にぶちまけられ、青臭ささと女の淫臭が交じり合う。
 微かに哀しそうな顔をして、眞弓は白くなだらかな腹の上へ吐精されたものを指先でなぞる。

 そんな彼女の様子を短い時間だけ見下ろしていたナニカは、何も言わずその場から退場した。

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