涙の味は意外と甘い (Page 3)

「念仏を唱えたってことは、もしかして」
「ええ、亡くなられたの。交通事故だったわ」
 北川が写真をしみじみと眺めた。
「仲睦まじい夫婦でね、亡くなられた後はひどく落ち込んで……後追い自殺するんじゃないかって心配していたのよ」
「そうなんですか……」
「でも、新しい恋人ができたなら安心よね。瑠璃さん、以前のように明るくなったし」
「新しい恋人……」

 終わった後、頬に手を当てるのは亡くなった夫のくせだったのだろう。部屋に来ないのは、夫との違いを見たくないため。
 瑠璃が好きだからこそ、好意が湊に向けられたものではないと気づいてしまった。それでも、湊は瑠璃をあきらめきれなかった。

「今日は騎乗位をしないでおこうと思うんだ」
 ホテルに入って湊は告げた。
「そうなの?」
「ああ。だから今日は服を脱がせるのも俺にやらせて」
 一枚ずつ服を脱がせていく。衣擦れの音がやけに響く。
 瑠璃は恥ずかしそうにしながらも微笑みを絶やさなかった。
 胸を揉みながら突起を舐める。時間をかけて、じっくり舐めた乳房が唾液で濡れ光る。
「ううん……ああ……」
 ホテルのベッドに横たわった瑠璃の足の間に顔を埋める。

「やあっ……」
 くすんだ茶色のひだを舌で押し広げるように舐めていく。小さな肉芽には触れずに舌全体を使って愛撫すると、瑠璃のふとももが細かく痙攣した。
「あ……ああ……」
 甘酸っぱい愛液がシーツに滴っていく。もどかしいのだろう、腰が揺らめいている。
「あうっくうう……!」
 瑠璃の体が震えた。くたりと力の抜けた体から舌を離し、切っ先を押し当てる。
「ふううっ……」
 根本まで埋めると、瑠璃が腰に足を絡めてきた。なじむまで待つつもりだったが、欲しがる仕草に理性が切れた。
「あうっあんっ」
 腰を押し付けるようにグッグッと動かす。

 瑠璃の瞳に自分の顔が映っているのを見て取り、湊は心の中で叫んだ。
 俺を見てくれ。
 こぼれる涙を直接舐め取り、唇を重ねる。瑠璃の中がいつもよりうねって締めつけてくる。引きずりこまれそうになるのを突く事でこらえて高めていく。
「うあっあああっ!」
 瑠璃がしがみついてきた。抱き返して、さらに突く。
「ああっも、もう……っ」
「ああ、俺も……!」
 瑠璃が痙攣し、直後に湊も果てた。
 騎乗位もいいが、こういうのもいいなと湊はぼんやり思った。

 瑠璃の頬を撫でながら、湊は満ち足りた幸福な気持ちでうとうとしていた。これだけ深く感じ合ったのだから、きっと大丈夫だ。
「ねえ……」
「ん?」
「今週末、海に行かない?」
 その一言で、眠気が吹き飛んだ。

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