眠り姫に聞こえないように (Page 4)
――眠れないの。
囁きが水音に紛れ、現在と過去で混ぜ合わさって藤一郎の耳朶を叩いた。
彼女も出会った頃のことを思い出しているのだろうか。藤一郎は、そんなことを思う。
下腹へと泡が絹代の肌を滑り落ちて行った。その泡を追いかけて、現在の藤一郎の手が絹代の陰りに辿り着く。繁みの感触を少しばかり楽しみ、彼の手が割れ目に触れる。
「あんまり強くしないで」
「沁みるか。じゃあ、こうしよう」
藤一郎は彼女の下腹部から手を離し、胸の辺りで組み直して抱いた。すると体温が体の前面を通して伝わってくる。体温を交換し、心音を伝え合うような抱擁を交わして、藤一郎は絹代の濡れた後頭部に鼻先を埋めた。彼女の体臭は洗髪剤に紛れず、相変わらず甘い。
「ふっ、くふっ、はぁ……」
腕の中で絹代が身動ぎし、押し殺した声を漏らす。ぬるりとボディソープでぬめった体が藤一郎の腕の中で踊る。肌の摩擦は痛みではなく、じんわりした快感を肌に生じさせていた。
「あぁ」
腰のあたりに勃起した男性器の存在を感じ、絹代が少しばかり声を高くする。
「体が冷えるから、湯船に入ろうよ」
「うん」
藤一郎の言葉に素直に返事をして、絹代は体をくねらせるのをやめた。しかし、シャワーで体を流されている間の目はとろりとしている。
欲情しているのだ。
彼女のそんな目を真っ向から見て、藤一郎の中にも体の反応以上の感情が沸き上がる。
抱きたい、と切実に眼前にいる女に対して思うようになっていた。
少しぬるい湯船に二人で入る。藤一郎の体に寄りかかるような体勢で、絹代は寛いでいた。
湯船には細い尻の片側が浮かんでいる。ちゃぷちゃぷと湯の波を浴びる、そのつるりとした尻肉に藤一郎は指先を滑らせた。
「ひっ」
驚いたのか、絹代が彼の上で身動ぎした。
尻の割れ目に辿り着いた藤一郎の指先が、そろそろと窄まった菊門をくすぐる。身を攀じて逃れた彼女を湯の中で回転させ、彼に背中を預ける格好にさせた。すると藤一郎の肩に頭を乗せ、間近から絹代が見上げてくる。
「そろそろ……、しよう?」
「仰せのままに」
腰をずらして藤一郎は、絹代の足の間から男根を出した。まるで彼女の股間から肉槍が聳えているような光景だ。絹代は男が自慰をしているかのように、肉棒を扱く。繊手に裏筋から先端まで丁寧に愛撫され、さらに藤一郎の男根は固さを増す。
「挿れてもいい?」
「うん、僕も、もう挿れたい」
女の肉を割って、男根の先端が陰唇に隠れていた膣口と陰核を擦る。膣からは愛液が溢れて、男を受け入れる準備はすっかり整っているようだった。
骨の硬さを感じる腰を掴み、藤一郎は彼女が逃げないよう拘束する。そして、下から女の内へと侵入を果たした。先端が包み込まれ、次いで雁首が埋まる。既に解れていた肉襞が肉杭を悦んで迎え入れる感触に、藤一郎も、当の本人も喉を逸らした。
良い話だ……心があったまる
もちち さん 2023年3月11日