熱帯暗夜 (Page 5)
秘所は既にぬめりを帯びている。
空調が止まって室温は上昇し、伸晃は汗をかいていた。しかし、彼女の股間の濡れ方は汗のそれは異なっている。
「あの時と同じですね」
口内を嬲っていた舌を怜子から引き抜き、伸晃は感慨深げに言う。
「あの日も、台風で酷い雨と風だった」
闇の中の影を追うように二人の目はお互いを至近で覗き込む。
「お母さんとは、ずっと呼べないでいました」
「今だって、呼べないでしょう?」
「……今も、愛してくれなんて言いませんよ」
「血の繋がらない親子として? それとも」
「男として」
記憶の中と同じように怜子が視線を揺らす。二重写しになる面差しを闇の中へ沈め、伸晃は昔日の言葉を吐き出した。
「愛情も、悔恨も、全部くべてしまえばいい。この熱に」
嵐の暗夜の帳に包み隠れて怜子を抱きすくめ、伸晃は彼女の背後に位置しているベッドへ押し倒した。
シングルベッドが二人分の体重を受け止めて軋む。抗議の声のようなそれを無視し、伸晃は乱暴に怜子のスーツを脱がせていく。
ジャケット、ブラウス、キャミソール、ブラジャーを力ずくで剥ぎ取り、露わになった双丘へむしゃぶりついた。微かな汗の味と人肌の温もりが舌の上へ広がる。固く尖っている乳首を舌先で転がすと、伝わってくる怜子の体温が確実に上昇していく。
怜子は赤子のように乳房をしゃぶっている伸晃の頭を掻き抱いた。品の良い色合いの口紅が引かれた唇を引き結び、血の繋がらない息子だった男の愛撫に堪えている。彼女の艶めいた表情から嫌悪ではなく、快感に耐えているのは明白だ。
しかし、怜子はそれを押し隠し、伸晃は気づかないふりをする。
装われた鈍感さで、二人は互いの秘所へ手を伸ばした。
器用な手付きでスラックスのチャックを下ろし、怜子の手は迷うことなく下着の中から伸晃の硬くなったものを探り当てる。先端を指の腹で優しくなぞられるだけで、先走り汁が鈴口から分泌されてしまう。
さらに怜子は先走り汁を潤滑油代わりに指で輪を作って、雁を重点的に責め始めた。彼女の細い指が心地よい締め付け具合で海綿体の先端を通過する度に、腰の後ろから痺れるような快感が伸晃の脳天まで走る。
レビューを書く