悲劇のヒロインはどこにもいない (Page 4)
「……そっか」
肩から力が抜け、馨の顔に暗い笑みが浮かぶ。
そんな彼女の顔を見て、今度は伊織の中に怒りが湧いた。彼は感情に任せて馨の唇を奪い、机の上に押し倒す。大きな机は二人が折り重なってもびくともしない。
キスをする時は目を閉じている。だから馨がどんな顔をしているのか伊織には見当もつかない。それでも柔らかな彼女の唇を啄み、舌先を入り込ませて絡ませる。抵抗はされなかった。熱い吐息と唾液がお互いの行き来する。
馨の服の下に手を滑り込ませ、伊織はくすぐるように肌を撫でた。吐息が一層熱くなり、その熱にあてられたように彼は股間が膨らむのを感じる。それはどうしようもない凶暴さで伊織を動かそうとした。だが、彼は覆い被さっていた馨の上から身を起こす。
とろりと溶けた目をして虚空を見ている彼女から逃げるように、伊織は下半身へと目を剥けた。
スカートから艶めかしく誘うように足が伸びている。伊織と同じく疼きに耐えるような仕草に我慢できず、彼はズボンのベルトを緩めた。
そのワンクッションが効いたのか、彼は多少の冷静さを取り度すことができた。もっとも、それは馨をもっと乱れさせたいという欲求に過ぎず、伊織は自らの獣欲に素直になることにする。
もぞもぞと太腿を擦り合わせている馨の足を開き、スカートをはだけさせる。床に膝をつき、伊織は下着に包まれた彼女の敏感な場所に舌を這わせた。
「ひっ」
悲鳴を上げて、馨は喉を反らした。手が伸びてきて彼の顔を股間から引き剥がそうとするが、再び舌先を動かすと力が緩まる。
割れ目に沿って舌を動かしている内に下着は伊織の唾液だけでなく、馨の愛液によってすっかり濡れてしまった。張り付いた布地にはぷっくり立ち上がった陰核が浮かび上がっている。それを伊織は舌先で可愛がるだけでは飽き足らず、甘噛みをした。
「ひゃうっ」
体全体を跳ねさせ、馨が声を上げる。
うっすらと汗をかいている足をなぞり、伊織の手が彼女の秘所に到達する。下着をずらし、直接触れるとすっかり濡れそぼった秘裂が彼の指先を迎えた。しっかりと蜜で指先を湿らせ、伊織は入口へと突き進む。
「やだっ、待って、怖い」
「解しておかないと、また痛いんじゃない?」
「あれは、……初めてだったから」
「じゃあ今度は気持ちよくなれるかも」
指が馨の中へと沈む。
「あっ、うぅん。解す、とか、嘘ばっかり、か、かき回してるじゃん。はぁ、くぅ」
「痛い?」
「痛くないけどぉ」
「じゃあこれぎゅってなってるの、いいんだ?」
「気持ちいいよぉ」
指で中を愛撫し、舌先で陰核をくすぐる。しばらく続けていると馨の全身に力が入った。自分の体を抱くような格好になり、目をぎゅっと瞑る。声を出す余裕もないのか、息すら詰めて背を反らす。膣から濃度の高い蜜をどろりと溢れさせたとき、彼女が達したのだと伊織は知った。
伊織はズボンから勃起した男根を取り出した。ひくひくと動き、先端は先走りで濡れている。
躊躇うことなく、彼は馨の中へと侵入した。自分の手で扱くのとは桁違いの快感が股間から脳髄まで一気に駆け上がる。腰が痺れ、動けなくなった。目の前が白むほどの快楽に意識を呑み込まれる。
それでもまだ半分ほどだ。
男根を全て彼女の中に入れてしまったら、どれほど気持ちが良いのだろう。それ以外の思考など失せ、伊織は腰を動かした。進むほどに快楽は強まっている。
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