小さくても好きになって (Page 2)

 高校生で彼女ができて、童貞を捨てた時は男として自信を持てた。が、翌日に完膚なきまでに打ち砕かれた。
 放課後の教室で彼女が友達に話しているのを聞いてしまったのだ。
「全然奥まで届かないんだよ。イッちゃうって演技したけどさ、あの身長であの小ささは詐欺でしょ」
 自分では女性を満足させられない。
 明はひどく落ち込んだ。

 もう女性と関係を持つ事はできないと右手で自分を慰める日々が続いた。
 ペニスサックを見つけたのは偶然だった。オナニー用の玩具を探していて見つけ、サイズアップできると知って即注文した。
 それから、マッチングアプリを使って女性と付き合うようになった。

 短小のモノを見られないように部屋を暗くして素早くペニスサックを装着する。それなりにうまくいったが、隠し事があるため長続きはしなかった。
 その思いが徐々にペニスサックを大きく、突起などがついている物などに変わっていった。ピノキオのように嘘をつくたびに大きくなっていく。いつまでたっても人間になれないにせものの人形。
 こんな事を繰り返していても仕方ない、相手にも失礼だからとやめようかと考えていた。
 少し寂しいが、オナニーだけにすれば短小だとバレるか心配しなくてすむ。

「ん?」
 マッチングアプリで向こうから連絡を取ってきた相手から連絡が届いていた。
 スマホの画面を見て、つぶやく。
「この人で最後にするか」

 現れたのはピンクのウィッグをつけた女性だった。カラーコンタクトを入れているらしく、瞳は金色だった。服はいわゆるロリータというもので、白とピンクのレースがふんだんにあしらわれていた。
「ほしのさん、ですか?」
「はい」
「その格好は何かのコスプレですか?」
「……お姫様をイメージしています」
「はあ」
 何だか変なのが来たなと思ったが、とりあえずカフェに入った。

 あれこれ話題を振ってみたが、ほしのはほとんどしゃべらなかった。
 好みのタイプじゃなかったのかと明は気落ちした。これで最後にしようと思っていたのに、いやヤリ捨てみたいな状態にならずに済んで良かったんだと自分を納得させる。

 カフェを出て、明は頭を下げた。
「それじゃあ、これで」
「あ、あの」
 去ろうとした明をほしのが呼び止めた。
「ホテル、行きませんか」

 暗くした部屋で、いつも通りペニスサックをつける。挿入しようとして、止められた。
「痛い! 無理、です」
「え……」
 けっこうほぐしたつもりだったが、足りなかったのだろうかと明は腰を引いた。
「これ、何ですか……」
 ほしのがおどおどとペニスサックを触った。
「あ、ペニスサックです。サイズを大きくしてより深くへ……」
「外して下さい」
「……でも」
「大きくて、痛いんです」

 ペニスサックを外すのは勇気がいった。
 またからかわれたらどうしよう、バカにされたら、満足させられなかったら。
 かなりためらってから、明はペニスサックを外した。
 どうせもう会う事のない相手だ。だったら、最後くらい自分自身だけでしてもいいんじゃないだろうか。

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