夜の手ほどき (Page 5)
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終わった後、寄り添いながら俊之は謝った。
「ごめんな、今まで気づかなくて」
「ううん。話さなかった私が悪いの。ごめんなさい」
小百合の手を取って頬に当てると、ゆずの匂いがした。大学時代から、英子はローズの、小百合はゆずの香りが好きだった。
こっちの匂いが落ち着くなと、深く吸い込んで俊之は目を閉じた。
俊之が寝入ってしばらくして、小百合が目を開けた。
「うまくいったわね」
将来性のある男を捕まえたはいいが、セックスだけはお粗末だった。下手だと指摘すれば、プライドが高いから機嫌を損ねて後々まで尾を引くかもしれない。かといって他の男と関係を持って、ばれたりすれば元も子もない。
我慢するのも、オナニーで発散するのもうんざりだった。
改善するしかない。
自分ではなく、他の女に指摘させるしかない。だけど、風俗に行って変な病気でももらってこられたら困る。その点、英子なら安心だった。俊之にずっと片思いしているので、他の男には見向きもしてこなかったはずだった。でも体を使っても落とせなかったとなれば、もうあきらめるだろう。
「好きな男に抱かれるって思い出をあげたんだから、感謝してほしいくらいだわ」
俊之の寝顔を眺めて、小百合はにんまりと微笑んだ。
「あなたにとっての可愛い女でいてあげるわ……あなたに価値がある間はね」
(了)
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