行きずりの夜

・作

荒木研一は夜のドライブの途中、コンビニの前で座り込んでいた人妻の葛西ひさ子を拾う。夫に浮気されたから飛び出してきたというひさ子は、仕返しに自分も浮気したいと自慰を始めて研一を誘う。たまらず、研一は車の中で女体に手を伸ばし……。

荒木研一は金曜の夜に用もなく車を走らせる事があった。仕事上での不満や日々のもやもやなどがたまると、深夜までドライブする。
 独身なのでいつもは一人だったが、その夜は助手席に女が座っていた。
 街灯の下を通るたびに白い太ももが浮かび上がるのを盗み見る。

 葛西ひさ子と名乗った女は足首まである長いフレアスカートをはいていたのだが、乗り込む際に太ももの中程までまくり上げていた。

 夫の浮気を知って家を飛び出したはいいが、行くあてがなくてコンビニの前で座り込んでいた所を研一が声をかけたのだった。
「あのさ、スカートめくれてるよ」
「知ってる」
 ひさ子があっさり答えた。
「夫が浮気したんだから、私も浮気してもいいと思わない?」
 ひさ子が研一の方を向いた。

 三十代後半だろうか。特別美人というわけでもなく生活に疲れた主婦といった印象だった。
「まあ、いいんじゃないか?」
「そうよね。ねえ、知らない男の車に乗った時点でそういうつもりがあるんだろうなとは思わなかった? 期待した?」
「正直に言うと、思ったし期待した」
「そう、良かった。誰でもいいって訳じゃないけど、あなたならいいかなって」
「光栄だな」

「運転中だから、直接触るわけにはいかないわね」
 不意に、ひさ子が研一の左手に触れてきた。ひんやりした柔らかい感触に腰の後ろがうずっとする。
「意外にゴツゴツしてるのね」
 そう言うと、ひさ子はすぐに手を離した。

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