女ルポライターの憂鬱 / オンナ絡みの揉め事解決屋<外伝>

・作

自分のグレー・ゾーンな“仕事ぶり”を取材にきた女ルポライターに、適当な事を話してはお茶を濁していた零細事務所の探偵・雑賀俊一(44歳)は、紹介者の手前、仕方なく捕り物を1件見せてやる事に。その事案を解決して、愛車のテストドライブにも同行してきた32歳のルポライターの体も当然ながら頂戴したのだった!

ルポライター

雑賀俊一は履き替えたばかりのブリジストンが、ボディとマッチングしているかどうかを確かめながら愛車のR34型スカイラインGT-RのRBエンジンを軽快に回していた。
探偵仕事のない日には、クルマを弄っている事も多いのである。

その俊一のカー・マニア仲間は「ミシュラン派」が多いのだが、あえて国産ブランドにしたのには特に意味はなかった。敢えて言うならば、20代の頃から使っているので当然の選択だった。

安く買い叩いた国産チューンドカーを乗っていた頃は、降雨時の横滑りが若干気になったりもしたが、現在はそんな事はない。安心して、コーナー前にソーイングさせて「えいやっ」と突っ込んで行っても大丈夫だ(笑)。

ただ、このクルマも生産を終えてから10年以上が経つので「次はエンジンも診てやらなきゃな」と思っていたのだった。

時刻は昼の2時。疾っているのは東北自動車道の鹿沼を越えた辺りだ。「新品タイやの皮むきに」と仙台まで牛タンを食べに行くところだった。

普段の試乗は「いつも独りで」やるのを常にしている俊一だったが、今回は助手席にひとりの女を乗せていたのだった。

この女性の名は波子といい、職業はフリーのルポライター。身長が150cmと小柄でスタミナ面(張り込みに不利だ)には不安があるが“ガッツ”があると業界では売り出し中だった。

その波子は、もともとは中堅どころの出版社の社員で配属は女性週刊誌。そこを退社後はフリーになって古巣や元競合誌、加えてネットニュースでも活躍中の「イケイケ状態」なオンナだったのである。去年は、小さなノンフィクションの賞も獲っていたほどだ。

なぜ、そんな女性が俊一を取材対象者として目を付けたというと、“巷の噂を聞きつけて”という些細な理由にほかならない。
曰く「元AV監督」、「女性絡みの依頼が多い」、「腕っぷしが立って強面」、「アメリカ帰り」…etc。探偵としては「?」な点も多々あるが、読者の「引き」が強いだろうと、編集会議を通ったらしかった。

俊一は、こんな取材はウザイのと、「仕事は秘密裏に」をモットーにしている事からすぐさま断るつもりでいた。それでも、いつも仕事をフってくれる弁護士の榊の紹介なので仕方なく承諾したのだった。

ただし、“俊一の写真・事務所の所在地等の記述は一切NG”と“依頼者の守秘義務は最優先”、そして“(あるわけはないが)反社との任務遂行上の衝突”などの刑事事件に発展する可能性のある案件の記載はNGという条件でOKしたのだった。

それにしても、こんな話しまで持ってくる弁護士・榊の顔の広さには閉口してしまう。良い意味でも悪い意味でもだ。

俊一は、スカイライン改の心臓部は(少ししか)弄っておらず、タイヤとマフラーを替えただけのライトなテストだったので、渋々ながら同行を認めていたという形だった。
加えて、いつも何だかんだ言いながら旨味・面白味のある案件を持ってくる弁護士の榊の紹介では、断るわけにはいかなかったのであった…。

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