濡れ濡れ天使ちゃん

・作

 間の悪い奴ってのは、どこにでも居るもんで。

「ですから、少子化を食い止めるのが急務となっていてですね」

 深夜、仕事場の広いオフィス。
 パーテーションで個人スペースが区切られている。
 その中の一角で、遅れまくってる仕事を片づけるべく俺一人で徹夜の真っ最中。
 そこへいきなり天使が現れた。

「天上界で討論された結果、人類の少子化の原因となっているのは」

 仕事で追い込まれた時に天使が降臨したら、状況が好転するのがフツーだ。
 急にナイスなアイデアがひらめくとか、おいしいブツが手に入るとかさ。
 しかしこの天使とやらは、現れると同時にとうとうとしゃべりだした。

「どちらかと言うと男性側の問題で、それは日本で生まれた“萌えキャラ”という」

 金髪で青い目で身長は130センチくらいの、パッと見コスプレしたチビッコJS。
 もちろんJSと言ってもそう見えるというだけで、話す内容からしてかなりの年嵩なのは明らかだが。
 フワフワで露出の多い、白いドレスをまとっている。
 背中には白い翼、そして頭の上にお約束の白いわっか。

 そんなありきたりなデザインの天使が、先進国に蔓延する少子化問題に関して講釈を垂れはじめたのだ。

「そんなアイコンにうつつを抜かして、生身の女性に興味を持たなくなったせいではないかと」

 と、萌えキャラそのものの造形が言ってるわけだ。
 アイコニストは粛清されるべきとか。
 なにをエラそうに。

「つーか、仕事の邪魔なんだけどね」

 と、出来るだけ冷たい口調で言ってやる。
 この仕事を仕上げられなければ、下手すると会社をクビになるかもしれねーんだよ。
 少子化とか以前に、俺個人の生死がかかってる一大事なんだよ。

「それで私たち天使がこの地上に使わされてですね、って何ですって?」
「邪魔だからどっか行けっつってんの」

 左手で払うように。シッシッと。
 今夜はまだ徹夜の1日目だから、それほど疲れは溜まってないはずだが。
 いかんな、もう幻覚を見るようになっちまったか。
 それともアレか、恐るべし今回の仕事ってことか?

「こんなカワイイ天使に向かって、どっか行けですって!?」

 空中にプカプカ浮かびながら、器用に怒りのポーズ(握りこぶしの両手を下に突きおろし、アゴを突き出して目と口をむく)をとってみせる。プンプンとかも言ってる。
 今日の幻覚は造形も受け答えもありきたりすぎて、どうもね、ちょっとね。

「そんなだから35歳にして彼女いない歴=年齢なのよ、香住田 藻也(かすみだもや)クン!」

 ああもう、そういうのいいから。そういう煽り。
 ありきたりなくせに鬱陶しいとかもうサイテーだし。

「……どう? アナタの事はなんでも知ってるのよ。畏れなさい敬いなさい」

 って、俺自身が見てる幻覚なら、俺のこと知ってるのは当たり前じゃん。
 なに自慢してんのかね、このアフォ天使は。

「そんな自慢するくらい全知なら、この仕事をどうしたらいいかアドバイスしてくれよ」
「ふぇ? しごとって?」
「このモニターに映ってるコレだよ。分かるんだろ? 天使さんよお」

 言って、画面を指さしてやる。
 この仕事。
 同僚たちは皆恐怖して、関わろうとしなかった代物。
 押し付けてきた部長自身でさえ、出来るだけ距離を取ろうとする逸物なのだ。
 先日などは、いつの間にかモニターとPC本体の裏側に、どこぞの神社のお札が貼られていたってくらいの。

 それでもコイツがマジで天使なら、もしかすると何とかしてくれるかもしれん。
 そう期待したのだが。

「ふ、人間ごときがやってることなど、この天使サマにかかれはアッというまに」

 言いながらモニターを見ると同時にフリーズしちまうアフォ天使。
 あーあ、やっぱコイツは俺の妄想か。
 決定か。
 無念。

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