青い薔薇は拙い恋の夢を見る (Page 7)
三度目の射精が近い。京太郎は蠢く女の肉に翻弄され、押し流されまいとするだけで精一杯だ。気を抜けば容易く射精してしまいそうな極上の肉悦が、男根を通じて脳髄を溶かそうとする。
「知花さん。知花さん」
何度も、何度も名を呼ぶ。
「ああっ、あああああっ」
知花は言葉を発することができない。
女の最奥を貫かれ、無意識に腰を押し付けていた。知花は震えている。己が裡に男が精を放った時、どれほどの快楽が得られるのか想像もつかない。神経が焼き切れてしまいそうなほどの悦楽がすでに供給されている。
どうなってしまうのか。
背筋をじわりじわりと未知の快感が這い上がってくるのを知花は感じる。知ってしまえば、きっと戻れない。
「知花さん」
呼ばれた瞬間。
ぷちん、と音を立てた気がした。それは最後の一線が切れる音だった。
「でるっ」
切羽詰まった京太郎の声。
続く灼熱の塊が腹の奥底に放たれる感触。
声を出せず、ぱくぱくと口を動かして知花は膣奥への射精の快感に溺れた。
京太郎も射精しながらも腰を打ち付けている。あまりに強すぎた肉悦に射精しているのか、あるいはしていないのか。判然とせず、夢見心地で女の身体に耽溺した。
だが、それも二人の体力が続くまでの話だ。
射精し、力尽きた京太郎は繋がったまま知花に覆い被さる。知花も受け止め、快楽に溶けた身体を何とか動かし、彼を抱き締めた。
そのまましばらくの時間が流れ、月が中天を過ぎた頃。
やっと二人は体を離した。
「あの、なんていうか」
「……」
知花は夜空を仰向けのままで見ていた。女陰からは粘度の高い精液がどろりと溢れでしている。
「順番逆になっちゃましたけど、俺と付き合ってもらえませんか?」
京太郎にそう言われ、知花は勢いよく体を起こした。
「いいの!?」
「そっちこそ、いいんですか?」
こくこくと何度も知花は頷く。
有能な上司というイメージからは、そんな仕草を京太郎は想像できなかった。だが、悪くないと思える。理想通りではないとは、微塵も思わない。
「その、なんて言いますか、まあ、時間かけて知花さんの探し物。一緒に探しましょう」
「あはは、なんか、キザね」
「いいじゃないですか、カッコつけたって」
「別にいいの。カッコつけなくて」
なんやかんやと言い合いながら、二人は体についた砂を払って立ち上がった。
それから並んでテントへと歩き出す。
お互いのことを見ながら、同じ方へと歩いていくのだ。
(了)
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