電車凌辱快楽責め (Page 4)
「ご依頼の人物です。間違えありませんか」
快楽責めで気を失っている標的の顔を男達に見せると、口々に間違いないと男達は告げる。彼らは一様に興奮していたが、その興奮は仄暗い。
「本当にありがとうございます。これで、我々も報われます」
代表らしい男が高梨に頭を下げ、他の男達は目配せし、満足そうに頷き合う。
「あとはこの女を連れて駅を出るだけです。すみませんが、最後に芝居に付き合って頂けませんか」
「構いません。アフターケアの範疇です」
高梨が了承すると男の一人が駅員の方へと駆けていき、駅員を連れて引き返してくる。
「こちらの方が友人の婚約者を助けてくれたのです」
駅員に向かって言われ、高梨は小さく頭を下げた。
「車内で気分が悪くなってしまったようです……」
「救急車、呼びましょうか」
駅員が連絡用無線を使おうとするが、それを薬指に指輪をした一番若い男が止める。
「彼女を迎えに来たので車で来ています。かかりつけも知っているので、大丈夫のはずです」
「あなたは?」
「彼女の婚約者です。名刺をお渡しします。それから、免許所も確認してください」
若い男は駅員に名刺を渡し、運転免許所を提示して標的と一緒に映っている写真も見せた。さらに駅近くにある病院の名前を告げ、そこへ向かうつもりだとも説明する。
「お願いします。彼女を一刻も早く病院へ連れて行きたいのです」
「……分かりました」
駅員は僅かな逡巡の後、高梨と男達を引き連れて改札へ向かう。
若い男は迷うことなく改札で標的のバッグを開け、パスケースを取り出した。それから自分も標的のものと揃いのデザインになっているパスケースを駅員に提示し、改札を通り抜けた。
他の男達もぞろぞろと改札を抜け、高梨もスマホを使って精算する。
婚約者と名乗った男が標的を背負い、駅近くのコインパーキングへ辿り着いた。奥まった位置に停車しているワゴン車へ、標的を運び入れる。
「私が運転しましょう」
高梨が名乗り出ると男達は悦び勇んで後部へと乗り込む。
キーを受け取り、高梨がパーキングから車を発進させると男達は、後部座席で標的に群がりあっという間に衣服を剥ぎ取ってしまう。
「詐欺師め」
「簡単に壊れるなよ」
「お前のせいで、俺の人生が滅茶苦茶になったんだ」
「ケツも犯してやる」
「君を信じていたのに」
人の怨みとは恐ろしい。
巡り巡って帰ってくる。
だからこそ、高梨のような復讐代理やサポートのような商売が成り立つ。憎い相手に復讐を果たすため、大枚をはたくことも人は惜しまない。
とはいえ、この男達は結局実行を他人任せにした。復讐だ何だと息巻いても、美味しいとこ取りで気分がよくなりたいだけの連中だ。
こんな調子の連中なら、どこで恨みを買っていてもおかしくない。
次の標的はこの中の誰か、かもしれない。
高梨は背後からの女の悲鳴を聞き流し、他人事のようにそう思うのだった。
(了)
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