古本で買った呪術を実際に試してみた (Page 2)

「いた」

 口の中で思わず呟く。

 対象は彼の斜め前にある窓際の席に陣取り、頬杖をついて退屈そうに講義を受けていた。

 明るい髪色が日差しを艶やかに弾いている。退屈のせいか少々物憂げに見える表情には、妙な色香があった。女性らしい魅力に溢れた曲線で構成された体の感触は、ふざけて飲み会で絡まれた時からしっかりと公輝の体に残っている。

 彼女を見つめながら、そっと公輝は人形の肩を叩く。呼びかけるように軽く叩いた。彼の指の腹には布の感触だけがある。

 しかし、公輝の視界の中で実験対象が動く。

 怪訝そうな顔で背後を見たのだ。だが、誰もいないと分かって、再び前を向く。納得いかなかったのか、窓を背にして足を組み直している。

「……マジかよ」

 本当に効果があった――のか?

 公輝はすぐに偶然ではないのかと、思い直した。

 もっと分かり易い反応が欲しい。

 ペン先で人形の平坦でのっぺりとした胸をそっと押す。

 今度はぎょっとした表情で対象が周囲を見回している。連続して胸をペン先で押すと、連動して相手も反応した。

 半ば確信しながら、公輝はスマホで対象へメッセージを送ってみる。

『五十鈴(いすず)、どうかした?』

 送信してから、公輝は胸への刺激を再開する。色々と角度を変え、強さを変え突いているとある一点で、びくんっ、と派手に実験対象――五十鈴が反応を示した。その一点を執拗に突いていると、次第に五十鈴の顔色が変わってくるのが分かる。

 紅潮し、堪えるように唇を引き結んでいた。

 しばらくすると五十鈴は俯き、服の裾を強く掴んで肩を震わせる。その力が抜けた五十鈴の顔は、羞恥に染まっていた。周囲に視線を走らせ、自分に誰も注目していないことを確かめている。

 だが、スマホに目を向け、苦い顔をした。すぐさま彼女はスマホを操作し、公輝に返信する。

『なんもない』

 素っ気ない文面だ。

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