引き際 (Page 3)
「じゃあ、廃棄弁当食べてること店長にチクっちゃおうかな」
悪びれる様子もない亜希子に孝也は苛立ちを隠さず舌打ちをする。こんな女に一度でも甘い顔をしたのが失敗だった。
「いいですよ、言ってください」
きっぱりと言い捨て、孝也は休憩室を出て行こうとする。
「ま、待って。ね? ちょっとでいいんだって」
顔をしかめて孝也は亜希子の手を振り払う。
「店長に借りたらどうですか?」
「そんなことできるわけないって、クビになっちゃう」
「それが俺になんか関係あるんですか?」
「……」
「そもそも貸してくれって言ってますけど、返すアテもなでしょう。ギャンブルに使うんだから」
「い、いつも飲まれちゃうんだけど、お金がもう少しあれば絶対に出てるんだってば!」
「……仕事のこと色々と教えてくれたんで忠告しますけど。ギャンブル向いてないんで、やめた方が良いですよ」
「絶対大丈夫だから、絶対返すから」
世界で一番信用できない絶対を二度も言われ、孝也はうんざりした。そして、もうどうでもよくなった彼はヤケクソ気味に亜希子の胸倉を掴んだ。
「じゃあ、金貸すんで命令きいてください」
「命令?」
「そうですよ。俺の言うことには絶対服従です」
無理難題を言えば諦めるだろう。
そんな心積もりで孝也は言っていた。
だが、よっぽど切羽詰まっていたのか、亜希子はかくかくと首を縦に振って見せた。
「命令きく。何でも言って!」
この人はアホなんじゃなかろうか、と孝也は呆れつつ亜希子の胸倉から手を放す。
「命令ひとつで一万です」
「オッケー」
廃棄弁当を食べて節約しているような学生に金をたかることに、亜希子は微塵も後ろめたさを感じていないらしい。その彼女の能天気な様子に、孝也はさらに無理難題を吹っ掛けてやることを決心する。
「とりあえず、しばらく抜いてないんで口でしてください」
「口?」
「フェラですよ。旦那さんにそのぐらいしてるでしょう」
「したことない」
「じゃあ、金はなしで」
「するするっ。するからやり方教えてよ」
「座ってください。椅子じゃなくて……、そう、床に」
指示に従い、亜希子は床へ座り込む。その前に立ち、孝也はズボンと下着の前を開ける。
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