今はまだ夜明けまで遠く (Page 4)

 電車が折り返しのため去る頃、内田が現れた。

 連絡はしていない。学生時代に待ち合わせていた駅に来ただけだ。この駅で待ち合わせる時は、お互いを求めているときだけ。忘れているかもしれないと思いながらも、浅見はこの場所に来ていた。

 賭けという程のものでもなかったが、彼は勝ったのだろう。あるいは二人とも欲望に負けたのか。

 改札を抜け、まばらな街灯の下を歩いていく。どの家も明かりはなく、住人が寝静まっているのだと察せられた。

 彼らが目指しているのは、小高い場所にある展望台だ。昼間でも人気はないが、夜はさらに静かになる。夜景に優れるわけでもなく当然のことだ。だからこそ学生時代の二人はこの場所で体を重ねていた。お互いの生活圏を離れ、スリルを楽しんだ。

 学生時代よりも苦労して展望台を登り、暗いだけの夜景を見る。

 キスはない。

 内田を引き寄て乱暴に服をはだけ、ブラジャーを毟るようして乳房を夜気に晒す。ぴんと尖った乳首を指先で弾いた。

「ひぃんっ」

 内田の声が暗闇に木霊する。

 彼女の喘ぎ声を聞き、初めて女を抱く少年のように浅見は自分のものを急いで取り出す。男根がぴくぴくと震えた。

 男根を擦り付け、浅見は準備が整ったことを示す。内田はスカートをまくり上げ、自らの秘所へ男根を導くが挿入は許さない。

「さっきのお返し」

 悪戯っぽく言い、ずらした下着の隙間から濡れそぼった割れ目に当てる。ゆるゆると腰を前後させ、太腿で挟み刺激を強める。亀頭が陰核に触れる度に内田は声を上げた。貞淑な妻や優しい母親としての面影は微塵もない。ただ性欲に溺れる獣の如き顔がある。

 動くたびにぬめりを増す秘所。挿入すらしていないというのに、浅見は呻きながら彼女の下着へ射精してしまう。しかし、学生時代のように硬度を失わぬ己のものに彼は衰えない欲望を実感した。

 二人の精液ですっかり汚れた内田の下着から男根を一旦引き抜き、彼女の膣へ指を挿入する。どろどろと溶岩のように蕩けた膣内を指でかき回す。激しい水音を響かせ、それに負けない喘ぎ声を上げながら達した内田は腰を震わせる。

 さらに膣内を指で刺激してやると先ほどよりも短い時間で絶頂し、潮を吹いてしまう。

「さっきの答えを聞いてなかった。旦那にもこんな風にされているのか?」

「……子どもができてからは全然」

 自嘲気味に内田が言う。

「前みたいにしてくれる?」

「ああ」

 乱暴に内田を壁に押し付け、背後から挿入する。固い印象だった彼女の膣は柔らかく、男を最奥まで容易く飲み込む。たっぷりと分泌された愛液が浅見のものによって膣から押し出される。腿まで蜜を垂らし、内田は挿入だけで絶頂した。

「イキやすくなったな」

「あなたのが大きいから」

 彼女は男を悦ばせる方法をよく分かっている。浅見は熱に浮かされ力任せに腰を打ち付けた。肉のぶつかる音が響く。少しばかり角度を変えて奥を突くと内田は悦び、膣を震わせた。

「許して、ずっとイッてるのぉ」

「好きなだけイクといいさ」

 男根で子宮口を抉りながら、浅見は指を肛門へ潜り込ませた。

「いぎぃ」

 髪を振り乱し内田が悲鳴を上げる。久方ぶりの快楽に悶える彼女に浅見はさらに欲情し、耳元に囁く。

「尻穴を旦那は弄ってくれないだろう?」

「全部よくしてぇ!」

 浅見はさらに腰を打ち付ける。自分の快楽だけを追う獣のような性交。迫る射精感に身を任せ、浅見は女の最奥へと精液を放つ。体の奥底にあったどろりと煮詰まった獣欲が熱となって放たれるような感覚だった。

 射精の感覚に浸り、浅見はぐりぐりと彼女の奥へ男根を押し付ける。女を孕ませる雄の本能的な行動だった。

「大丈夫な日だから、もっと」

 絶頂の余韻に溺れながら内田は自ら腰を押し付ける。

 彼女と共に快楽の中に沈みながら浅見は理解した。

 諦念に乾いた胸の内にあったものの正体に。

 ただの男と女に戻る時こそ、自分が欲していたものだと。

 それが一時のものであっても。いや、夢のように一夜で消えてしまうものだからこそ求めたのだ。

 朝日に消える夢だとしても今はまだ夜明けまで遠く、二人は闇の底にいる。

(了)

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