女ルポライターの憂鬱 / オンナ絡みの揉め事解決屋<外伝> (Page 2)

探偵の日常-仙台行前-

とはいえ俊一は、グレーゾーンな案件も“多少は”ある身の上だ。
そうした出来事の一部始終を書かれたのでは、探偵の免許を取り上げられてしまうばかりか生命の危険さえ無いとは言えない。

特に、事務所兼寝床を今の雑居ビル内の旧ネカフェに移してからは、ちょいちょい危ない案件に絡む機会が増えていたのも事実だった。
「非合法な」という程ではなかったが、「それなりのダーティさもあって然るべき」と考える事もあったりしていたのだった。

ただし、そんなあらましを自他ともに認める新進のルポライターに明かすわけはなく、当たり障りのない「浮気調査の顛末」や「家出娘の奪回作戦」をこれまでは話してきた。
そのほかにも、不倫や認知等の女性が関係した事案もメインにである。

「これらが『オンナ絡みの解決屋』って言われる由縁なんですかね?」

通り一遍の質問をしてくる波子に対して俊一は、ただニヤニヤするだけだった。
それも事務所には入れずに、カフェでのインタビューが多かったのである。

なぜかといえば、上の階で高級パブを経営しているセフレの美也子が、波子の存在を気づいていたからにほかならない。

榊は美也子の実母・怜子が経営するバーの常連で、どうやら怜子経由で情報が漏れたらしい。その事を客として飲みに行った時に窘めようとしたら、

「いいじゃないの、別に美也子と結婚して尻に敷かれてるわけじゃなし」

と、一笑に付されてしまったのだった。

その時以降、「絶対に事務所には波子を入れない」と誓った俊一だった。

それに、いつも憎まれ口ばかり叩きあってはいるが44歳のオジサンの俊一が「30歳の美人ママの相手をしてもらえる」という、特典もある。チャイナ服の似合う美也子は、“結構イけるボディ”だし、スリットからハミ出させた脚はカモシカのようだ。気立てもイイ点も気に入っていた。要するに、徐々にではあるが美也子に惚れていたのである。

しかし、そうは言っても榊の紹介なので無下にもできないのも本音。多分、抜け目のない“ヤリ手ジジイ”榊翁の事だから、マスコミ関係者も取り込んでおくという目論見もあるのだろう。
その点は俊一も同じなので、取り敢えずは突き放すのではなく、付かず離れずで利用していけばいいと思ったのだ。

「今はヒマだから、ネタになるような依頼がきたら連絡するからオレの件は『待機』という事にしておいてよ」。

こうして、俊一は“オンナ絡み”という異名があるものの、浮気調査、W不倫問題(民事)を自分の事務所直依頼で片づけたり、榊の弁護士事務所の下請に励んでいたのである。
このうち何件かは、波子も同席させたが「ややこしい案件」には声をかけなかったのは道義上にも当然だった。

ひょんな事から、AV監督時代からの後輩・里美や、米国某スクールの同期で現在は、たまにドライバーをしてくれている山本の存在を世に知らしめるわけにはいかなかったのである。

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