冴えないおじさん (Page 2)

「ぎっ」
 奇妙な声を発し、その少年も動かなくなる。
 自分達が絶対的に優位だと高をくくっていた少年達は五分とかからず、誰も動かなくなった。

「あっ」

 乱暴に揺すられた弁当の中身が片側に寄ってしまったことに気付き、倫太郎が情けない声を上げる。悲しい顔をしながら、彼は路上を見回すが、少女の姿がない。白状なことに少年達を置いて逃亡したらしい。

 倫太郎は顔をしかめ、少女が逃亡したであろう道を駆けだす。

 少し走ると必死に逃げている少女の背中が見えてきた。そのまま悠々と追いつき、足を払う。少女は盛大にすっころぴ、背の低い街路所に突っ込んでいく。
 頭から突っ込んだせいで足だけが歩道に突き出す格好になった少女の片足を掴み、倫太郎は街路樹の茂みから引っ張り出してやる。

「最初っから、僕の財布を狙っていたわけだ」
「やぁ、やだぁ、許してっ」
「許してって君ねぇ。人を殺そうとして許してくださいって、そりゃあんまりだよ」
「なんでもしますっ、だからぁ」
「何でもって、じゃあ君の内臓を売って小遣い稼ぎをさせてもらってもいいの?」
「ひいっ」

 小粋なジョークのつもりだったのだが、少女は本気だと思ったらしく顔を真っ青にしてしまう。
 そして――
「あっ」

 思わず倫太郎は小さく叫んで、少女の足を放した。彼女の股間からゆっくりと染みが広がっていき、地面に小さな水溜まりを作る。アンモニア臭が倫太郎の花を刺激した。
 カチカチと歯を鳴らして震え、少女は涙で一杯になった目で倫太郎を見ている。化粧が剥がれ落ち、酷い状態になっていた。

「仕方ないなぁ。ほら、立てる?」

 涙と鼻水で顔面をぐちゃぐちゃにしている少女を立たせ、倫太郎は手を取って歩き出した。目的地は安息の我が家だ。
 途中で動かない少年達の傍を通り抜け、少女が半狂乱になったので仕方なく、倫太郎は腹に一撃お見舞いしてしまった。かなり手加減していたので一瞬息が詰まる程度だが、少女は従順に歩くようになり、倫太郎としては有難い限りである。

 そうこうするうちに自宅へと辿り着き、倫太郎は少女を風呂場に放り込む。

 小便塗れで住処をうろついてほしくなかったのだ。ほどなくしてお湯の流れる音が聞こえてきたので、倫太郎は小さなちゃぶ台に冷え切ったコンビニ弁当を乗せ、もそもそとかき込む。

 おかずがミックスされて得体の知れない味になっていたが、食べられないことはない。ただ、少し米が足りない気がする。パックのご飯も買うべきだったかと後悔するが、最近は腹が出てきたからダイエットだと自分に言い聞かせて倫太郎は我慢した。

 弁当を完食し、ゴミ箱に空容器を捨てていると少女が降るから出てきた。体にタオルを巻いているだけなので、ボディラインがよく分かる。
 腰から尻にかけてのラインはすらりとして細いのに、胸はそれなりにサイズがあるので相対的に大きく見えた。なにより若い娘特有の張りのある肌と瑞々しい肢体の伸びが眩しい。

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