青春の残滓 (Page 3)

「……っく」
「あううっああっ……」
 同時に達し、瞳は体を震わせた。汗まみれの体を合わせたまま荒い息をつく。

「……また会えるか?」
 問いに、頷きで返す。
 そういえば生で中出しされた事はつきあっていた頃から1度もなかったと、ふと思った。

*****

 お互いに家庭のある身で、そうそう何度も逢瀬を重ねる機会はなかった。瞳としても、夫を愛しているし、家庭を壊す気はない。
 関係を持ったのは、心残りのようなものだった。平凡な日常に紛れ込んできた、青春の残滓。恐らく、誠治も同じなのだろう。

*****

「転勤する事になったんだ」
 もうすぐ春が来ようとする季節。行為後、誠治が言った。
「どこに?」
「泊まりがけで行かなきゃならないくらいの遠い場所」
「……そう」
 瞳はシーツのしわを眺めた。
「遠距離は無理」
「……そうだな」
 結局、同じ終わり方をするのかと瞳は溜め息をついた。

*****

 蒼と柚希ちゃんは大泣きした。
 引っ越しの日に見送りに行くと、なかなか離れようとせずに苦労した。
 瞳と誠治は蒼君のママ、柚希ちゃんのパパとして、特別な会話を交わす事もなく別れた。

 車を見送って、蒼が泣きながら言った。
「僕、柚希ちゃんと約束したんだ」
「何の約束?」
「大きくなったら、結婚しようって」
「……そう」
 瞳はもう見えなくなった車を見ようとするかのように目を細めた。
「……叶うといいわね……」

(了)

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