空似 (Page 5)
びくっと腰が震え、信じられない程の量、そして感覚の長さで鏑木は射精する。一瞬、放尿しているのではと自分で心配になったが、感覚が明らかに違う。背骨を痺れさせ、脳を焼くような射精の快感が彼のそんな憂慮すら焼いた。
射精を終え、硬度を失った肉棒がずるりと膣から抜け落ちる。後を追うように精液がぼたぼたと地面へと落ちた。
「思い出した?」
女性がボンネットにぐったりともたれかかった体勢で鏑木に問いかけた。
言葉の真意が分からない鏑木は黙り込むしかない。顔見知りではあるが、それはこの
貸し倉庫で度々会うからに過ぎない。
「この服を着ても思い出さないなんて……、本当にしょうがないわね」
ふらりと女性は立ち上がり、裸足のままどこかへ歩き去ってしまう。
無言でそれを見送った鏑木は、ふとあんな制服は仕入れていないということに思い至った。セーラー服は確かに何種類も仕入れたが、見たことのない校章が付いている。
顔見知りというだけの、素性も知らない女性。
なぜ、自分にあんなことを問うたのか、鏑木にはまるで分らない。
他人の空似ということなのだろうか。
鏑木は半ば呆然とそんなことを考える。
これ以来、彼女と会うことはなかった。
(了)
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