爛れた田舎の同居生活~息子の嫁と、熟女な妻は、元恋人?!~ (Page 3)

 今の時代、こんな田舎でも『同性愛者は面汚し』などとは、相手に向かって言う者はそうそういない。

 古民家ブームで――これは田舎ならではの事情、と言うべきか――この集落にも、男女取り混ぜての同性愛者達が、田舎の楽園を求めて移住しようと訪れたり、実際に住民として、集落に根をおろそうと頑張っていたりするからだ。

 

 こういう事態となったので、

『本人達が言わなくても分かる場合には、分かっているのをわざと隠して対応しよう。オープンなカップル達にはこちらもオープンに接しよう』

と、集落の顔役――斉藤自身もその一人だ――の集まりで決まったほどである。

 その時たまたま滞在していた民俗研究者が、一応大学教授だからということで若い世代をよく知る人として意見して欲しいと招かれていたのだが、その研究者いわく、

『明治より前は衆道と言って男の同性愛者は今よりオープンだった。しかも上級の武士の間でも盛んで、主君に寵愛されて側近になるのも当たり前にあった。今更、同性愛者を排除するということは、その時代の日本を否定するというのと同じだ』

と言い、皆を驚かせたが、皆がその場で自分のスマホなどで調べてみると、その民俗研究者が言った以上に同性愛が当たり前にあった時代があるのだと知り、

「やはり同性愛者を否定するのは駄目だ。移住してくる若い人達に頭が固いと思われるのが嫌だというのもあるが、あの人達の好みを否定するのは、実際に同性愛者だったえらい人のご先祖や歴史上の人達を、駄目な人間と言っておとしめるのと変わらないじゃないか。だからむしろドーンと受け入れて、何か面倒が起こったらその時にどうするか、移住してきた人達も含めた、集落の全員で考えよう。それでいいじゃないか。未来はどうなるか、誰にも分からん。具体的に何がいつ起こるか分からんのに、対策なんて考えれんよ」

と誰かが言い出し、皆その発言に賛成した上で、例の決議と相成ったのを、斉藤は思い出した。

 

 そしてそれを女二人に語って聞かせ、

「そんな親御さんなら、むしろ捨てられてラッキーだったんじゃないかね。うちの息子と離婚しても、出来たらうちに居てくれるか?あの馬鹿息子は追い出すから」

「ちょっとあなた!捨てられるなんて、言い方がきついわよ?!」

「う……それはすまんかった」

 斉藤は謝り咳払いをすると、自らの妻に向き直った。

「だってお前も息子よりは、この嫁(こ)にここに居て欲しいんだろう?」

「それは認めますわ。認めますけど、でも、あなたはそれで――いいの?」

「母さんや、忘れたかね?わしはこの集落きっての助平(すけべい)だぞ?」

 困り切った表情の嫁二人の顔が暗くならないよう、斉藤は努めて明るい、冗談めかした口調で言った。口元に思いっきりいやらしげな、にやにや笑いを浮かべることも、忘れていない。

 

「自分の嫁と息子の嫁がそういう関係なら、女二人が裸で抱き合うところを、是非見たいんだよ。――ああ、ビデオなんか撮りゃせん。ビデオに撮って、何になる? 生の行為を覗く以上に、興奮するもんがあるかね?」

「もう、お義父様ったら――何を」

 息子の妻は首まで真っ赤になったが、斉藤の妻は笑い出した。

 

「そう、そう、そうだったわ。すっかり忘れてた! この人ね、結婚前は何にも――手にキスさえもしなかったの。でも結婚しちゃったら――次の日の朝、起きたら私、全身キスマークだらけだったのよ! おかげで、もうお義父様やお義母様、義兄さん達にあわす顔がなくってね。部屋から出られなかったわ。お義母様や義姉さんは、何か乱暴にされたんじゃないかって気を揉んでくれて、部屋まで見舞いに来てくれたんだけどね……あの時は、本当に困ったわ。体を見られるのが、もう恥ずかしくて恥ずかしくて。でもこの人は助平(すけべい)だけれど、少なくとも女に対しては本当に真っ直ぐな、なんて言うか……エロ紳士な人なのよ。だから、安心なさいな。こんなことで私やあなたを放り出したりは、絶対しないわ。お友達同士で飲む時には、ネタにされちゃうけど」

「そうそう。息子の嫁とうちの嫁が女同士でデキちゃって、おかげでイイものをみられるし、うちの嫁も若返って綺麗になって、夜ねだってくると……」

「やあねえ。ほんっとうにこういうことにかけては、際限ないんだから」

 妻が泣き笑いながら軽く自分の肩をぶち、布団の中で嫁が涙を拭いながらクスクスと笑う様子を見て、やっと斉藤は安心した。

 そして唐突に気付いた。

「この嫁(こ)が気分があんまり良くないらしいから、冷たい飲み物か何か――」

「あ!いけない!」

 妻は一気に、主婦の顔に戻った。

「冷蔵庫に入れるの忘れてたわ!ああ、夕食の支度とお風呂と……。あなた、何か食べれそう?」

「ええ、お義母様の作るものなら。出来たらさっぱりしたものの方がいいんですけれど……」

 恥ずかしそうにしながら、それでもいつもよりも甘えた口調になった嫁に、斉藤夫妻は揃って、改めて――その愛情が異性愛であれ、同性愛であれ、親子愛であれ――よりいとしさをかき立てられたのであった。

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