底辺の恋 (Page 2)
そんな日々が続いていくと思われたが、ある日突然断ち切られた。
ナンバーワンの凰喜にのめり込んでいたのは愛彩だけではなかった。同じようにのめり込んでいた彼女を取り戻そうと、彼氏が凰喜を包丁で刺したのだ。
幸い、命に別状はなかったが凰喜はその女と本気で付き合おうと思っていたらしく、恋人がいた事にショックを受けて無気力になりホストを辞めてしまった。
店の他のホストに高い謝礼を払って頼み込んで、凰喜のマンションに行った愛彩は抜け殻のようになった凰喜を見つけた。
このままじゃこの人は死んでしまう、何とかしなければと強引に自分のアパートに連れ帰った。凰喜は抵抗もせずついてきた。働くどころか家事も何もしようとしなかったが、愛彩はそれで良かった。彼は自分がいなければ生きていけないという優越感に浸れた。
だがそれも長くは続かなかった。
「あの……実は生活ぎりぎりなの」
愛彩は思い切って打ち明けた。
「切り詰めて何とかやってるんだけど、凰喜さんには苦労させたくないの。だから、夜の仕事も始めようかと思って……」
「夜の……ホステスとか?」
愛彩は頷いた。
「接客業できるのか?」
「頑張ってみる……駄目なら、ふ、風俗とか……」
「風俗か……」
凰喜が考え込んだ。
「少し待ってくれないか。俺、仕事を探してみる」
愛彩は笑顔になろうとした。が、顔が引きつってうまくいかなかった。
凰喜はコンビニバイトの仕事を一日で辞めてきた。そして、昔の知り合いに仕事を紹介されたと言った。
「風俗で働くのもいいけどさ、本番をやった方がもうかるからな」
愛彩と凰喜は古い一軒家に引っ越し、そこで客を取る事になった。
他の男に抱かれるのは嫌だったが、凰喜のためなら我慢できた。凰喜が仕事を始めれば職場の女が放っておかないだろう。それなら今の状態の方がいい。
今日の客は50代くらいの白髪交じりの男だった。
「事情は聞いている」
愛彩が裸になると、男は太い注射器を取り出した。
愛彩は本能的に後ずさり、凰喜が止めに入った。
「ちょっとお客さん、薬は」
「これはおもちゃだよ。針がついていないだろう?」
確かによく見ると、先に針はなく安っぽい作りの注射器だった。
中にローションを入れて、男が膝をついた。
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