添い寝リフレで、年下擬似彼女と甘々密着
溜まったストレスを解消するために普段やらないようなことだろうがやってしまえ、とやけくそ気味に外出した圭介。向かった先は濃厚接触間違い無しの添い寝リフレ。まなみと名乗る馴れ馴れしい年下の女の子に勝手に彼女面されながらも、抱き合っていると――
妙に苛立つ日が続いている、と思った。
仕事の部署の配置変えに、部下のミスの尻拭いで休日出勤――。
ストレスというのは目に見えないが、ここしばらくずっと忙しかったので溜まっていてもおかしくはない。
唯一の趣味だったジョギングも悪いウィルスが流行している影響でやめてしまったし。
きっと疲れている。
やりたいことも我慢して俺は一体何の為に生きているんだろう、そんな暗い考えがよぎるほどに。
ともかく気分転換が必要だ。それも早急に。
久しぶりの休日。
今日は一日、好きに生きることにしようと決めた。我慢なんてしない。
普段しないようなことをめいっぱいするんだ。
まず初めに外に出てやった。
ウィルスの感染を防ぐために外出を控えろ、密着状態を避けろと言われているが、そんなものは知るか。
なんなら、こっちから濃厚接触しにいってやるぐらいの勢いだ。
ということで来てみたのがここ――添い寝リフレ。
狭い個室で、布団にくるまって。女の子と長時間ひっつく。
濃厚接触間違い無し。
正直こんなご時勢だ営業していないのではないか、と思ったら普通に営業中だった。
受付の人が言うにはむしろ客足が増えて賑わっているらしい。
確かに、店内を見回すまでもなく客の姿は多い。
一番安いコースですら30分で5000円。随分割高だとは思う。だが、まぁ、いい。
今日はもう財布の紐を緩めるどころか、ばっさり切ってきた。
家計は来月の俺に任せる。
しばらく待たされたものの、順番が来るのは割と早かった。
店に入るまでは勇み足だったクセに、妙に緊張してしまっている。
音を立てないぐらい慎重にドアノブを回して、部屋の中に入った。
備え付けの小さな照明が薄紫色に壁を照らしている。照明はごくわずかで、足元すら見えないレベルだ。
部屋には人影もなく、誰も居ないようだった。
「ふーむ」
しばらく待っていれば女の子が来るのかもしれない。
待っている間暇なので探索……といっても、部屋は狭いし寝床以外目に付くモノが無かった。
マットを隣に二つ並べた上に布団を敷いただけの、簡易ダブルベッド。
「あれ?」
触り心地はどうだろうかと布団を捲ると、目が合った。
長めの前髪に、小顔。女の子だ。
「もしかして~~……お客様?」
芯の通っていなさそうなふにゃふにゃした声で尋ねられる。
「え、はい」
まだ状況が飲み込めずにいるがなんとか返事だけは返せた。
「ごめんごめん、まだ時間あると思って休憩してたの~」
謝罪を口にする彼女だがあまり悪びれる様子もない。
それどころか目の前でふあぁ、と大きく口を開けて欠伸する始末。
随分やる気の無い店員だ。
というかこの子、中学生どころか小学生でも通りそうな童顔なのだけれど本当に大丈夫だろうか。
非合法だったりして。
猫のように丸めた手の指先にはネイルもしてあったし、化粧もしているみたいだが――
「まぁいいや、ねよ? 挨拶は布団の中でもできるし」
捲った布団の中から手だけを出して、ちょいちょい、と手招きしてくる。
少し下がった瞼にとろんとした瞳。
この子、本当に寝るつもりなんじゃないだろうか。そう思えるくらいには眠そうに見える。
昼食後に襲ってきた眠気に流されて、そのまま昼寝してしまうみたいに。
とはいえ添い寝リフレに来たのは初めてで勝手が良く分からないので、従うほかなかった。
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