兄の結婚 (Page 2)

食事と入浴を済ませると、兄と婚約者は離れの部屋へと向かった。

我が家は造りが古いもののとても大きな住まいで、兄は昔から離れの部屋を好んで使用していたのだ。

兄が入浴し、婚約者が両親に就寝の挨拶をしている隙に、私は部屋の押し入れにそっと身を潜めた。

趣味が悪いことは分かっていたが、私は兄が恋人を家に連れてくると、いつもこうして押し入れの中から会話を聞いている。

「今日は、疲れたかな?」

「ううん。ちょっと緊張したけど、ご両親も、都ちゃんも優しかったから安心した」

そっか、と兄は呟くように言うと、部屋の照明を落として婚約者を抱きしめる。

濃密なキスの音が続いたあと、二人が服を脱がせ合う衣擦れの音がした。

その後、兄はバイブのスイッチを入れて、婚約者の身体に充てがう。

押し入れ越しにしか聞こえないけれど、婚約者の細かな喘ぎ声で、どこに押し当てられているのかは見当がついた。

「声、少しなら出してもいいよ」

「だめ、恥ずかしい…」

いくら離れの部屋でも、まだ結婚もしていない男の実家で喘ぐことは憚られるのだろう。

「だめ、音が大きい…」

「君は、これじゃないと感じないくせに」

兄の声と同時に、婚約者の喘ぎ声が少し大きくなる。

バイブはいやらしい音を立てながら、婚約者の秘口を刺激している。

私の下半身も急激に熱を帯び、そっと下着を下ろして指を入れてみた。

キスも愛撫もされていないのに十分すぎるほど潤い、指は驚くほど潤滑に動いた。

「あ、だめ、気持ちいい…」

「ん、イキそう?」

あんなに純情そうな顔をして、婚約者はバイブを使われることが大好きな女だったのだ。

彼女は何度も「イク、イク」と掠れた声をあげ、私も自分のクリトリスを強く擦り上げる。

彼女がくぐもった声を出したあと、すぐさま低く唸るような声がして、兄が挿入したのだと分かった。

そのまま二人が重なったベッドは軋み出し、規則正しい喘ぎ声が聞こえる。

婚約者と兄はその後も体位を変えて何度も交わり合い、5度めの「イク」という言葉でフィニッシュを迎えた。

彼女はしばらく荒い息を吐いていたけれど、落ち着いた頃に「本当は私、都ちゃんに嫌われてないか心配だったの」とうわごとのように呟いた。

「まぁ、都はまだ20歳でいろいろと多感だけれど、そんなことはないよ」

兄はすっかりいつもの穏やかさを取り戻し、彼女に優しく語りかける。

「今日会って、そういう子じゃないって本当に分かった。これからも、仲良くしていけたらいいな」

「うん。きっと大丈夫だよ」

二人はしばらく取り留めのない話をしていたけれど、そのうち眠気が襲ってきたのか、寝息を立て始めた。

私は二人が熟睡していることを確信すると、少しずつ押し入れの戸を開け、そっと自室へと戻った。

廊下の窓からは眩しいほどの月明かりが漏れ、ライトなんかなくても夜道が歩けそうなほどだった。

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