兄の結婚 (Page 3)
その瞬間、兄はもう私のものではないのだということが、実感をもって迫ってきた。
いや、元から私のものだったことなんて、一度もないのだ。
兄弟の中で、唯一の他人である私が。
私の実母は、現在の母の妹にあたる人間だ。
彼女はとても奔放な性格で、若い頃から男遊びが絶えず、私を未婚で産んだあともそれは止まらなかったらしい。
見兼ねた父と母が私を引き取って、実子さながらに愛情をかけてもらい、ここまで生きることができた。
私は、今でも時々考えることがある。
もしも私の実母が真っ当で、私と兄が従兄妹同士で出会えていたならば。
いつか、想いが通じて結ばれることはあったのだろうか。
でも、「たられば」なんて考えれば考えるだけ、虚しくなるだけなのだ。
私はこの先、決して兄と肉体的に交わることはない。
私は一つだけ開いていたパジャマのボタンを止めると、兄の部屋を振り返りもせずに自室へと向かった。
(了)
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