青い薔薇園の管理者に甘い罰を (Page 5)
「初めまして、大樟明穂さん」
若いようにも、熟れたようにも聞こえる不可思議な声音である。女性のものであることは確かなのだが、それ以上のことは分からない。だが、一度聴いたら、決して忘れることはできないだろう。
「三枝さんの件では、色々と手を打っておられたようね。悪手ではあったけれど」
「……」
ころころと鈴が転がるような声で笑われ、明穂は言葉をなくした。脳裏に鈴鹿の能天気そうな顔が浮かぶ。
「ああ、勘違いなさらないでね。あなたがお仕事を依頼した鈴鹿さんからの情報ではなくてよ?」
脳内を覗かれたかのような言葉に明穂はぎょっとする。
「三枝さんが情報を売ろうとした相手が、わたくしの知り合いだったのよ。可笑しいでしょう? でも、それを知らないあなたが色々と奮闘していたようだから、お手並みを拝見していたのよ」
最初からオーナーの手の上にいたのだと、明穂はようやく自覚した。
「明穂さん。あなたの失敗は一人で問題を解決しようとしたこと。自助努力は大切だけれど、あなたは頑張り過ぎたわね。だからペナルティを受けてもらいます」
「ペナルティ」
現実感のない単語を明穂は舌の上で転がした。罰を受けるなど、人生で初めての経験だ。
「古賀のフルコースを受けてもらおうかしら。安心して、拷問ではないから」
悪戯っぽく笑い、オーナーは通話を終えた。無機質な電子音だけが明穂の耳に届く。
「大樟さん」
呼びかけられ。はっと明穂は身を固くする。先程オーナーから告げられた執行人の名前は、古賀。つまり目の前にいる紳士然とした、この人物だ。
「ペナルティを受けて頂きます」
刑の執行が彼の口から宣告される。
古賀はベッドの近くに置いてある大ぶりなアタッシュケースへと手を伸ばした。ロックを外し、大きく開く。ベッドで横になっている明穂からは見えないが、その中には多種多様な器具が収納されていた。男性器を象ったものや産婦人科で見られるような医療器具じみたものもあった。それらの共通項は女性の体――特に性的な部分へと触れるための器具であるということだ。
それらの器具の中から古賀は革製の枷を取り出す。安っぽい代物ではない。しっかりと拘束しながらも内側には着用者を傷つけないよう柔らかな素材が使われていた。
全部で四つある拘束具を古賀は手早く明穂の手首と足首に装着する。もちろん明穂は身を捩って抵抗した。だが、鈴鹿の当て身によって痺れた体では、無駄がなく素早い古賀に抵抗することができない。
「痛みはありませんか?」
微かに表情を翳らせ、古賀は明穂に訊ねた。
「こんなっ」
思わず悲鳴じみた声を上げ、明穂は拘束具を外そうとする。しかし、それよりも早く古賀が動く。手首の拘束具同士を連結させ、更に手首を返した状態でベッドの足と二又になった細い鎖で繋がれてしまう。両手を頭上に上げた状態になり、拘束具を外そうにも自由にならない。
逃れようと明穂が暴れる程にスーツの下にある乳房が揺れる。スカートも次第にまくれあがり、ストッキングに包まれた太腿が露わになっていた。下着がギリギリ見えずかえって煽情的だ。
ベッドに古賀が片膝を乗せる。咄嗟に明穂は自由に動かせる足を使って、彼を蹴飛ばそうとした。下着が露わになるのにも構わず、それこそ死に物狂いの必死さで彼女は反撃を試みたのである。
だが、その反撃も虚しい結果に終わった。
古賀は明穂の膝の裏に手を入れ、下半身を持ち上げる。そして、手首と同じように鎖を使い、ベッドの足と繋げてしまう。そうすることで明穂は足を大きく広げ、尚且つ下半身を持ち上げるというかなり窮屈な姿勢にされてしまった。
「少々お待ちください」
秘部を自ら突き出すような破廉恥な格好にされた明穂を横目に、古賀はアタッシュケースからエアマットを取り出し、彼女の腰の下に差し込んだ。瞬く間に膨張したそれのおかげで姿勢が楽になる。とはいえ、楽になったところで羞恥心が消えるわけでもなく、明穂はもじもじと腰を動かした。
「では、始めます。体の力を抜いた方がよろしいですよ」
そう言いながら古賀は医療用の滅菌されたゴム手袋を両手にはめた。それから丁寧な手付きで明穂の着ているブラウスのボタンを外し、ブラジャーに包まれた胸を外気に晒す。
「いやぁ」
思わず明穂は悲鳴を零すが、すぐに敵愾心が込み上げてきた。これほどの屈辱があるだろうか。唇を噛み、これ以上悲鳴など飛び出さないようにして、明穂は強く古賀を睨みつけた。
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