副業初体験
早く時間が過ぎてくれ。
愛理は心の中でそう呟いた。
愛理は生まれたままの姿で自分よりも年下である健二という男の前に立っていた。
健二は裸の愛理を鋭く見つめ、キャンパスに筆を走らせていた。
「あの……私はまだ、このままでいないといけないのでしょうか?」
愛理は恥ずかしそうにもじもじとしながら尋ねる。
「あぁ、もちろんだよ。君とはそういう契約を結んだじゃないか。時給1万円のバイトなんてそうそうないだろ」
健二はそう言うと淡々と筆を走らせる。その時だった。健二はキャンパスを手に取ると床に叩きつけた。狭い書斎の中に鈍い音が響き渡る。愛理は驚き体をびくっと震わせた。
「どうしたんですか?」
愛理はおそるおそる尋ねた。
「ダメだ。思い通りにペンが走らない」
健二はそう言うと頭を抱えた。
「……そうなんですか」
愛理は心配そうに健二を見つめる。すると健二は顔を上げ愛理を見つめる。
「こう見えて僕は19歳の頃に天才だ、神童だと言われてデビューしたんだよ。なのにあれから3年が経っても自分の納得のいくような、値の付くような作品をかけていない。僕の才能は枯れたのかな……」
「すごい、私の人生と大違いだ」
愛理は自分が裸であることも何もかも忘れ、目の前の天才に純粋な賞賛を送った。
「よければ君の人生について聞かせてくれないかな?私は担当にヌードデッサンを頼める人材を探してくれとしか言ってなくてね。それで君のことはないも知らないんだよ」
「え、私の人生なんて特に話すようなことは……言うなら平凡です。絵に書いたような平凡です」
「そんなこと言っても何か1つくらいあるだろ大恋愛をしたとか、勇気を出して何かに挑戦したとか」
「……ないですね、27年間生きてきたけど大恋愛どころか恋人もできたことがないし、何か特別なことをしたこともないですし、普通のうだつの上がらないOLです。あ、でも勇気を出したといえばこのヌードデッサンに応募したと言うことですかね?」
「恋人ができたことがないのか、もしかしてだけど、君はセックスをしたことがないのかい?」
「え、まぁ」
愛理は照れながら頷いた。
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