触れられない恋 (Page 2)
ぐっと入れられて、私はうめいた。
「んっ!」
「っ大丈夫か?」
「……ええ、久し振りだから、ちょっと……大丈夫、続けて」
奥まで入ってくるのを、何でもない顔をしながら歯を食いしばって耐えた。痛くてたまらない……けれど、中が井口君の形に広がっているのが嬉しい。
「んっああ、うう」
井口君が突き始めた。痛みの中にかすかに違う感覚が芽生え始める。けれどつかむ前に井口君は果ててしまった。
「ごめん、その……俺、初めてで……」
「……あら、光栄ね。私が初めてなんて」
引き抜かれると、オイルに混じって赤いものが流れた。
「え? これって」
「生理が始まっちゃったみたい」
ティッシュで拭ってゴミ箱に捨てる。
さよなら、私のバージン。
本当は、サークルに入った時から井口君が好きだった。こっそり見つめ続けて、だから同じサークルの山崎千代さんが好きなのかもしれないと気づいてしまった。
山崎さんは明るくて優しくて人気者。愛想がなくて冷たい印象を与える私では到底勝ち目がない。だから、あきらめようと思った。
なのに、あの日。
珍しくべろべろに酔った井口君と偶然二人きりになって欲が出た。でも振られるのが怖くてセフレなんて提案をしてしまった。
山崎さんが太陽なら私は月。いいえ、遠くでかすかにまたたく小さな星に過ぎない。超新星のように最後に爆発して輝こうとしているけれど、きっと消えてなくなっていくだけ。
私は枕元の棚からマスクを出して井口君の顔につけた。
「ん……」
不織布のマスク越しに唇を重ねる。
舌を出してみたものの、意外とゴワゴワするし繊維の感触が不快だった。
「マスク越しにディープキスは難しいわね……」
マスクに私のリップクリームがついている。なんだかおかしくなって笑うと、井口君が顔をしかめた。
「何笑ってるんだよ」
「別に?」
井口君が気分を害したように目を細めた。頭を下げ、私の胸に顔を寄せる。
マスクを濡らしている唾液は冷たくなっていて、少し身を引くと、逃げられないように背中に手を回された。
濡れた繊維が乳首をこすって、むずがゆくなる。頭は下がっていって、おへそをかすめて足の付け根までなぞっていった。
「うんん……」
こすられて、自然と足が開いていく。マスク越しに甘噛みされて、じわっと中が熱くなって愛液があふれるのが分かる。
マスクがなければ、私の女の部分に舌が入ってきて、温かい粘膜同士が絡み合って際限なく濡れていくのに。
切ないけど綺麗な終わり方……素敵でした
もちまる さん 2023年8月3日