触れられない恋 (Page 3)

 舌を出せず、表面だけを刺激する愛撫は奥の疼きを増していく。
「ねえ……もう……」
「もう、何だよ?」
「あら、言われなきゃ分からないのかしら? 意外と察しが悪いのね」
「どうして欲しいか言わせたくなるのが分からないのか? 意外と察しが悪いな」
「あなたがこんなに意地が悪いなんて知らなかったわ」
「紗和にだけだ」
 山崎さんなら、可愛くねだるんでしょうね。
 そう思うと心が陰るけど、私だけと言われると単純に嬉しくなる。

 顔を離し、中に入ってくる。
「……ああ……」
 好きな人の形に、中が悦んでむしゃぶりついていくのが分かる。
「あ、あ……ひうっああんっ」
 私の反応を見ながらイイ所を見つけてこすっていく。そこばかりを責められて、彼の胸を軽く叩く。

「あなた本当に童貞だったの? 飲み込みが早すぎでしょ」
「研究熱心って言ってほしいな」
「んあうっバカっひあっあっやだっイッちゃうっ」
 押し寄せる快感に、私はニーソックスに包まれた足を井口君の腰に巻き付けた。小刻みに揺らされてイキっぱなしの状態に内股が痙攣する。
「紗和っ……」
 マスク越しにキスしながら私達はつながり続けた。

 日曜日、私達映画研究会は映画館へ出かけた。
「パンフレット買う?」
「そうだなあ」
 映画館の売店の前で話している井口君と山崎さんを、山崎さんの友達の高橋さんがニヤニヤしながらからかった。
「お似合いねー、お二人さん」
「もう、何言ってるのよ」
 否定しながらも嬉しそうに見える。

「付き合ってもないのに、そういう事言うなよ。迷惑だろ」
「あ……ごめん」
 高橋さんがちょっとあっけに取られたように謝る。
「あ、ポップコーン買おうよ。ねっ」
 変な空気になったのを打ち消すように山崎さんが言った。
 それを横目に、私は劇場に入った。研究会のメンバーで席をまとめて取ったので、私は端を選んでいた。

 二人を見ていると、心がざわざわする……。

 席に座って待っていると、隣に井口君が座った。
「え? そこって……」
「代わってもらったんだ。ポップコーン、食べきれそうにないから一緒に食べようぜ」
「山崎さんと一緒に食べればいいじゃない」
「高橋さんと食べるだろうからさ。あの二人、仲いいし」
「……そう。半分払うわ」
「いいって。これくらいおごるよ」
「……ありがとう」
 こんな事して、期待しちゃうじゃない。
 指が触れないようにポップコーンを取るのに気を取られていたせいで、映画の内容はほとんど入ってこなかった。

公開日:

感想・レビュー

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触れられない恋 へのコメント一覧

  • 切ないけど綺麗な終わり方……素敵でした

    もちまる さん 2023年8月3日

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