触れられない恋 (Page 4)
「んう……」
私はゴムに包まれたモノをくわえていた。直に触れないという約束なのでコンドームをつけてもらっている。
初めてだし、ゴム越しなのでうまくできているか分からない。
(確か、裏スジを舐めると気持ちいい……はず)
私の唾液が表面を流れ、それを潤滑油に袋を揉む。
(ゴムの味しかしない……)
亀頭を舌で包んで刺激すると、ゴムの向こうでぬるつきが増した。ひくつきながら硬くなっていくのに合わせて、私の中が期待で蜜を流し始める。
先端の小さい穴をえぐるように舌を差し込むと、井口君がうめいた。
「んっ」
後頭部をつかんで口の中に押し込まれた。喉奥を突かれて、えずきそうになって涙がにじむ。
「ごめ、イク……!」
口の中でブルルッと震えて精を吐き出される。
いくら体を重ねても、彼の味を知る事はない。虚しい気持ちでコンドームの先にたまった液体をゴム越しに食んだ。
講義を受けるために教室に入ると、山崎さんと高橋さんがいた。私は1列空けて後ろに座った。
「でさあ、千代がテニスサークルの人に告白された事あったでしょ」
私に気づかず、話し続けている。
「千代はすぐ断ったけど、井口君に告白OKしたって嘘ついたのよ」
「ええ? どうして?」
「だってあんた達、じれったいったらないもの。だから焦らせてあげたって訳。そしたら、その後の飲み会でめちゃくちゃ飲んでるし、絶対ショックだったのよ」
ぎゅっと力が入ってノートにしわが寄る。
「途中でいなくなっちゃったのも、千代に泣き顔を見られたくなかったからかも」
「もう、そんな訳ないでしょ」
あの日、井口君が記憶をなくすまで酔っていたのは、それが原因……?
「後でちゃんと断ったって訂正しておいたから。絶対間違いないって、井口君は千代が好きなんだって」
「そ、そうかなあ……」
「そうそう」
「……私、告白しようと思う。ちゃんと伝えたい」
「うんうん、頑張って。応援してるから!」
高橋さんに背中をバシバシ叩かれて、二人が笑い合う。
私は気づかれないように教室から出た。
「……やっぱり両想いなんじゃない」
ホテルのベッドの上で、いつものように服を身につけたまま私達は交わっていた。
薄い半透明のゴム手袋に包まれた指が私の体内を探る。
「あうっ」
井口君の指だと思うだけで、体の奥が疼いてくる。もっと奥まで届くものが欲しくて中のひだがうねっている。最初の頃の違和感が嘘のように、私の中は刺激に弱くなって確かなものを欲しがるようになった。
切ないけど綺麗な終わり方……素敵でした
もちまる さん 2023年8月3日