故郷は君が待つ場所 (Page 5)
「なにしてるの。だめだよ」
「ダメじゃない。私は賢吾さんとしたい。それで責任取って」
「責任って……。ここに残れってことになるの?」
「そうじゃないよ。……待ってるから帰ってきてほしいの」
「帰って、くる……?」
「うん。ずっと待ってるから」
「いつ帰ってくるかなんて、決めてないんだ」
「待つよ」
「もっと素敵な人が、きっと見つかるよ」
「その人は賢吾さんよりも笛が上手で優しいの?」
「分からないよ、だけど僕よりも――」
「その人は賢吾さんじゃない」
キッと瑠璃は賢吾を睨む。暗い部屋の中でも射貫くような強さが分かった。
出会った時と変わらない強さだ。
賢吾は諦めと共に項垂れる。だが、いやな気分ではなかった。故郷を失ったと思ったが、待ってくれる人がいる、そう思えるのも悪くない。
「ひとつ、約束してくれる?」
「なに?」
眼光鋭いまま瑠璃が返事をする。
「僕よりも好きな人ができたら、必ず教えてほしい」
「普通そういうこと言う?」
「大切なことだからね」
そう言って賢吾は瑠璃の額に口付けた。
瑠璃は彼に抱き着き、胸に顔を埋める。賢吾も彼女の背中に手を回し、緩やかに抱いた。
「ねえ、しよう?」
「ええ?」
「私じゃいや?」
「そんなつもりはないけど、まだ君は学生だしね」
「んもぉ」
瑠璃は一旦体を離し、ベッドに乗った。それから服を脱いでいく。
「あー、寒いなー、一人で裸のままだと風邪ひいちゃうかも」
「はいはい。後悔しないでよ?」
「するはずないじゃん。だって、好きな人と初めてだよ?」
「じゃあ、優しくしてあげないとね」
賢吾は裸になった瑠璃の頬に口づけ、油断したところで彼女の足を掴んで一気に広げた。
お互いが繊細に大事に求めあう様に感動…
他の相手でも良いような題材では、気持ち良く読めませんが、益田氏作品は「その人だからこそ」で心に沁みます。男性向けではありますが、女体を大事にしている様も美しいです。
魚月 さん 2020年11月9日