二人きりでかくれんぼ (Page 3)
しばらく二人は無言で隣り合う。
時折、風が吹き抜けて梢を微かに揺らす。太陽は雲にでも隠れたのか、木漏れ日はない。
雑木林の中は世界から切り離されてしまったように静かで、智則は押し入れの中に凜と二人で隠れた時のことを思い出した。
暗く、それでいて生暖かい安穏とした狭所。
傍にいる凜の息遣いと体温だけが世界の全てになっていた時間。
連なる木立から視線を移動させ、隣にいる凜を見る。
初めて二人で押し入れに隠れた小学生の頃と違い、少しだけ癖のある凜の髪は少年のように短い。そのせいなのか、子供と大人の境界線上にある少年のような線の細さと、大人になった女性の円やかさ同居して凜を性別不詳な雰囲気にしている。
だからなのか凜は、男性からも、女性からも、よく誘われていた。
ユニセックスな服装を好むこともその一因だろうか。
智則はスマホを見て難しい顔をしている凜の腰へすっと手を伸ばした。
触れると男性よりも骨格が細いことがよく分かる。智則はそりまま手を伸ばし、凜の腰を横から抱き寄せる格好になった。
智則は服を着ているせいで体温を感じ難いことを残念に思う。
相変わらずスマホを弄っている凜の腰から、ゆっくりと背中へと手を智則は上昇させた。背骨の辺りからくすぐるような手つきで、指先で背筋を撫でる。
「っ……」
ぴくりと凜の肩が動き、吐息した。
上昇した智則の手は肩甲骨の辺りを通り過ぎ、首筋に到達する。そして、柔らかな後ろ髪を掻き分け、項を羽毛の先のような微かな接触で刺激した。
「はぁっ、んぅ……」
スマホを胸元に抱き、凜は声を堪える。
ほんのりと熱を帯びた首筋から、次に智則の手が向かうのは耳だ。形の良い耳たぶを触る。他のどの部位とも似ていない独特の感触を指先で楽しみ、次に耳の裏側をくすぐった。くすぐったそうに首を縮め、凜は目を細めて笑む。
智則の手は耳から離れて降下を始めた。肩のラインをなぞり、腕を伝い、そして腰へと舞い戻る。それから彼は凜の服の裾に指先を潜り込ませた。
服の下は外界とはまるで違う。凜の体から発せられる体温で暖かく、微かに湿潤とした空気を感じさせる。滑らかな肌に智則は躊躇わず触れた。瑞々しい弾力が指先を押し返し、皮膚の下にある脂肪と筋肉が存在を主張する。
「ねえ、いい?」
おずおずと凜が智則の太腿に手を乗せた。
「僕はいいけど。……凜はいいの? それ」
視線で彼がスマホを示すと、凜はスマホをポケットに仕舞い込んだ。それからゆっくりとズボンの内腿にある縫い目をなぞるように手を動かす。そのまま際どい所まで凜の手が進んでくるが、寸前で膝の方へと引き返してしまう。
「凛」
「なぁに」
身を寄せ合い、互いの体に触れながら智則は凜の耳元で囁く。
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