二人きりでかくれんぼ (Page 4)

「初めて、こんなふうに触り合った時のこと、憶えてる?」
「……憶えてる。押し入れだったよね、うちの」
 二人の顔が近づく。だが、口付けを交わすことはしない。鼻先を擦り合わせ、頬を合わせる。息遣いが耳元にかかり、お互いに焦らされている感覚が強まった。

「かくれんぼしてたんだっけ?」
「そうだったと思う。凜の家に友達が集まって」

 智則は凜の首筋に顔を埋めた。体臭なのだろうか。微かに柑橘に似た香りが鼻先にある。
 凜は唇で首筋の敏感な個所を愛撫され、目を細めた。体を許した相手から与えられる性的な快感と、安堵にも似た安らかな心地良さが体の内側にゆっくりと満ちていく。

 それなのに、現在地は誰が来るかも分らない雑木林の中。

 いや、この時間なら誰も来ない。
 凜は一週間かけて観察した結果を思い出し、智則の性器へと手を伸ばした。微かにズボンの布地を押し上げるそれの感触に、下腹の奥がぞくりと疼いた気がする。

 一方で智則は積極的な凜の行動に中てられ、同じく大胆になった。するすると背中を登り、ブラジャーのホック片手で器用に外してしまう。
「あ」
 小さく凜の喉から声が漏れた。

 下着の戒めから開放され、凜の乳房が重力に従って僅かに下降する。それを智則はもう片方の手で掬い上げ、浮いたブラジャーの隙間から手を忍び込ませるのだった。

 容姿は中性的でも、やはり女性としての体は出来上がっている。凜の乳房は若々しく上向き、重力に対して堂々と抵抗していた。しかし、その決然とした峰の形からは想像もつかない程に柔らかく、凜の乳房は智則の指の形に合わせてぐにぐにと簡単に形を変える。そして、瑞々しく元の姿へと戻るべく指を弾くのであった。
 乳房全体を愛撫していると次第に先端が硬度を増す。服の中にあり、直接見ることは叶わないが、智則はそれが鮮やかな桜色の突起であることを知っている。

 きゅっと指先で乳首を摘まみ、弾く。
「んぁ、くぅん、はぁっ。あぁん」
 甘く鼻にかかった声が中性的な凜の口から零れると、智則は妙に倒錯的な気分にさせられる。

 倒錯的なのはお互い様かと、智則の冷静な部分が思い直す。
 誰にも見つからず、それでいて誰かの気配が感じられる場所。
 そんな場所での睦事に、どうしようもなく興奮してしまう。

「初めて凜のここに触った時のことは憶えてる?」
「中学の時、……音楽準備室だったよ。智則は憶えてる? ここを初めて触った時のこと」
 凜の指先が智則の男根、その先端をかりかりと引っ掻く。ズボンの布地越しのその感触はぴりぴりと痺れるような快感となって、彼の腰から脳へと駆け上がっていく。

 自分のものがズボンを押し上げる力を増していくことを実感しながら、智則は凜のジーンズの中へと手を差し込む。
「あっ。うぅんっ」
 しっとりと濡れて陰唇をぬめらせている凜に智則は答える。
「凛の部屋だったよね。凜のお母さんがいたから、すごい――」
 興奮した、と智則は言って凜の耳を甘噛みする。

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