二人きりでかくれんぼ (Page 8)
そそくさと二人は小屋から逃げ出した。
そして、智則はその段階になって、今までいたのが途中で見かけた神社の境内だと気付いたのだった。
二人は神社と外界を隔てる石段に並んで腰を下ろす。
「ちょっとお腹空いたね」
「うん」
凜の言葉に智則は頷く。
「ここに来るまでに気になるお店見つけたんだけと、そこでもいい?」
「いいよ」
今度は凜が頷く。
合図をしたわけでもなく、二人は同時に立ち上がり、手を繋いだ。
「次は智則の番だね」
「実はもう場所は決めてあるんだよね」
「そうなの?」
「次の休みは」
そこまで言って智則は凜の耳に口を近づける。
「そこで、しようね」
「うん」
秘密を共有する二人だけの、かくれんぼ。
これまではずっと続いてきた。
これからも、ずっと続くだろうか?
ふと智則はそんなことを思う。
お互いを見失わず、見つけ続ければきっと続くだろうと思い直した。
凜の手を智則は少しだけ強く握る。
智則に応えるように凜は握り返す。
並んだ二人の背中は町の中へ、離れることなく紛れていくのだった。
(了)
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