会員限定の出会い

・作

仕事のストレスが溜まって性欲が抑えきれなくなった城崎瑞穂は、それを発散させるためにいつも利用しているジムに向かった。そこは高額の会費を取る代わりに、会員の男女に「一晩の恋」の出会いの場を提供するジムだ。その日瑞穂が相手に選んだのは、年上の柳田圭介だった。目的が合致している2人は簡単な言葉で合意をとって…

「お隣、いいですか?」

30分ほどのランニングを終えてジム内のベンチで城崎瑞穂が休憩していると、細身でやや年嵩の男が声をかけた。
今日瑞穂がこのジムに来てから、声をかけてきた男はこれで3人目だ。

「どうぞ」

微笑んで瑞穂は答えた。

「よく来られるんですか?このジム」

男は柔和な笑顔を見せた。
この問いかけにどういう意味があるか、瑞穂は熟知している。

「月に1回くらいですかね」

「そうですか」

声をかけた男、柳田圭介は瑞穂の身体をじっとりと舐め回すように見た。
丈の短いタンクトップがぴっちりと瑞穂の乳房を包んでいる。
走る際に痛みがないようにきつい締め付けがあるタイプだが、それでも瑞穂の乳房はタンクトップから溢れそうにはみ出しており、走っているときからゆさゆさ揺れる様に男の視線が集中していることを瑞穂は自覚していた。

「今夜、この後のご予定は?」

性的な視線にぞくぞくと興奮しながら、瑞穂は今日の相手はこの男にしようと決めた。

「…特に、決まってません」

瑞穂の答えに、圭介はぐっと距離を詰めてきた。

「では、お誘いしても?」

瑞穂は微笑んで頷いた。
ここでは、これだけのやり取りでその先の展開への合意が取れる。
そういう特別なジムなのだった。

*****

瑞穂は30歳になったばかりの都内に勤める会社員だ。
大手製造業での広報業務は華やかでそれなりに高給だがその分ストレスも溜まりやすい。
溜まったストレスが性欲に転化しがちな瑞穂が1年前に知ったのがこの会員制高級ジムだった。

このジムは女性会員からもそれなりに高額の会費を取るが、男性会員からはその10倍は取っている。
そして会員になる際には仕事や勤務先まで含めた厳密な身元確認が行われており、強引な行動をすれば即刻通報、会員資格剥奪となるシステムだ。

つまり経済的にかなり余裕があって、なおかつ社会的に失えない信用を抱えた男性と、それなりのキャリアがあってセックスが好きな女性のみが会員になることができるのである。

ジム内で発生した自由恋愛については感知しない、という体裁でこのジムは運営されている。

ジム内で出会った男女が合意の上で一晩の恋に落ちてしまうこともあるかもしれないが、それはジムの運営とは関係のないことだ、というのがジムの表向きの言い分であり、実際この場で「売買春」が行われている事実は全くないため、当然違法性はない。

互いに安全にセックスできる、安心して遊べる相手を探す男女がこのジムには集っており、特に女性にとってはジムに行った日に相手が見つからないということはほとんどない。

なので、仕事のストレスが溜まりに溜まって、ムラムラしてどうしようもなくなった夜に瑞穂は仕事の後にこのジムに直行する。

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