義父と私の罪 (Page 2)
「お義父さん」
聡子は柔らかい乳房を押し付けるようにして司郎に近づき、キスせんばかりの距離でじっと目を見つめた。
「…本当に、聡子さんはそれでいいのか」
他に相手がいれば再婚してもらった方がいいと思ったのは確かに司郎の本心だったはずだが、こうなってみると司郎は実際、こうして聡子に求められることを期待していたのだと気づいてしまった。
自分の浅ましさに呆れながら、しかし司郎は堪えきれず聡子の髪に手を伸ばし、彼女の後頭部に手を添えて強くキスをした。
「…んっ」
聡子の甘い吐息が漏れ、気持ちが決壊したかのように2人は一気にキスを深めた。
*****
夕食の席で司郎がふと
「聡子さんも、いい人がいたらいつでも再婚していいんだからね」
と言ってしまったのは、昼間に若い男と楽しげに会話する聡子の姿を目の当たりにしてしまったからだった。
相手はスーパーの店員で、別に聡子と何か関係がある男という訳でもなかった。
それでも、同じ年頃の男と並んでいる聡子を見ると、それが当たり前の姿なのだと痛感し、惨めな罪悪感に苛まれて言わずにはいられなかったのだった。
さっと顔色が変わった聡子が
「そんな人いません」
とすぐに答えた。
死んだ夫の父と2人で暮らし続けることを決めた時、周囲からそれがどういう風に捉えられるかということは聡子にはわかっていた。
しかし他人にどう思われても義父との生活を続けようと思ったのは、瓜二つと言っていいほど司郎と隆司の外見が似ていたからだった。
聡子にとって夫の隆司は初めての男であり、唯一の男だった。
これから先も一生、ただ隆司だけが聡子にとっては男だと思えたから結婚した。
だから隆司が死んでも、他の男とどうにかなる可能性など聡子には少しもなかった。
隆司と瓜二つの司郎だけが、その例外だったのだ。
司郎といると、隆司はきっとこんな風に年齢を重ねるのだろうと当然に思えた。
何年も何年も、ずっと一緒にいられたような気にさえなった。
それがいつしか慕情となり、隆司を永縁に喪ったことを忘れられるような自己欺瞞に聡子は溺れた。
理性はアラートを鳴らしていたはずだが、結局タガが外れて聡子の方から迫って司郎と関係を持ってから、聡子は久しぶりの肉体的な快楽にもすっかり溺れてしまった。
司郎が受け入れ、司郎からも求められることが増えると、聡子は自分が抜け出せない沼に浸かっていることをすぐに自覚した。
しかしそれはあまりにも心地よい沼で、聡子はそこから抜け出す必要がないことにもすぐに気付いた。
互いに求め合う2人がどれほど性欲に溺れようと、それが誰に関係があるというのだろう。
歪んでいるから何だというのだろう。
だから、ふと正気に返ったような言葉を発する司郎のことは何としても止めなければならないのだった。
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