ご注文は花の罰ですか? それなんですか? 襲っちゃっていいですか? (Page 5)
たしかにこの状況は、成人男子にとっては極楽だっただろう。
しかし、それで緩んだ表情を見せられた花瓶の精の気持ちは複雑だった。
『アナタたち、それじゃ罰じゃなくてご褒美になってるわよ』
自分の花瓶としての姿を知ってる者が見ると、花瓶の姿に戻ってしまう。
それはシュレディンガーの猫の話と同様で。
見た瞬間に存在が確定するという、現実のモノにだけ通用する話だった。
しかし、花の精たちにはそんなことはどうでもよかった。
「そうだ、おしべなら花粉を根こそぎ奪ってしまおう!」
と、勝気なアスパラガスの花の精が提案した。
植物の常識ならば奪われた方はそれで枯れていくから、罰になるだろうと。
それで花の精たちが集まって18歳くらい美麗な人形(ヒトガタ)になった。
「う、うわっ」
驚愕に包まれる藻也。
人形は委細構わず、藻也を誘惑し始めた。
モデルのようなスタイル、薄々のドレス、流れるような金髪に碧眼。
さらに花々の美しさを全て受け継いだその美貌。
甘い蜜とその匂いで満たされた秘所に、気が付けば屹立していた肉棒を。
藻也は立ちバックで挿入していたのだ。
「うはああっ……」
花が持つ美と人のエロの融合。
藻也はその時、人類がかつて経験したことのない膨大な快感の中にいた。
肉棒から与えられる快感に全身が溶かされるような錯覚と共に。
それ故に、たった数度のピストンで全放出して果てて倒れたとしても。
誰も文句は言えないだろう。
『うふふ、たっぷり出したわね。さて次は……』
人形は妖艶な笑みとともにそう言って、薄々のドレスの前をはだけた。
その股間には、花のおしべにも似た陰茎があった。
しかもそれは、藻也のモノよりも更に一回り太くて長い。
そして、倒れている藻也の腰を持ち上げて……
「ちょ、ちょっと待てそれ、って……ギィヤアアアアアッッ!!!」
植物は(ごく一部の例外を除き)基本的に両性具有なのだ――
結局、花瓶の精は閑散の理由を見つけられなかった。
しかし藻也の惨状を見て、自分の感情の正体には気づいた。
そして同時に、それは絶対に叶えられない願いだということにも。
(了)
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